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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン87 鉄砲水と紫毒の記憶
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直接攻撃)
 稲石 LP1550→100 

「くっ……」
「たとえグリーディー・ヴェノムの効果だろうと、稲石さんのライフが尽きれば意味はない。バトル、霧の王で最後の攻撃、ミスト・ストラングル!」

 霧の王が飛び、毒龍が迎え撃つ。先手を打って放たれた紫色の破壊光線を剣の腹で受け止めその向きを逸らし、そのまま振り切られたその一撃が龍の首を狩った。

 霧の王 攻5000→グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻3300(破壊)
 稲石 LP100→0





「稲石さん!」

 吹っ飛ばされて壁に激突し、糸の切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちた稲石さんに、ソリッドビジョンが消えるのも待たずに駆け寄ろうとした。敵だろうがなんだろうが関係ない、稲石さんは僕の大事な友人だ。
 だが途中で、その足が止まってしまう。目の前で今、何かが起きようとしている。稲石さんの体からそしてその服からも、漆黒のオーラが溢れ出ている。あれは洗脳に使われたダークネスの力、ではない。確かにダークネスの力ではあるが、あの黒い霧のようなオーラには見覚えがある。ミスターTが不意に現れたり消えたりする時、決まって漏れ出ている闇の一部だ。

「まさか、稲石さんに化けて……」
「いや、違うよ。自分は自分、それは間違いない」

 思い当たった可能性も、弱々しいがはっきりした声で本人が否定する。でもそれはそうか、霧の王にチャクチャルさんと、僕の2大エースを両方持ち出してやっと勝つことができるほどの相手。ミスターTにそれは、いくらなんでも役不足だ。じゃあ、こうしている今も全身から溢れ出ては消えていくその闇はどう説明するのか。もう1度立ち上がる力も残っていないのか、その答えを壁にもたれて座り込んだままでぽつぽつと話し始める。

「にわかには信じられないだろうけどね。自分は元々、ここの生徒なんかじゃなかったのさ。その稲石ってのも、当然偽名だよ。本名は……いや、そんなもの存在しない、って言った方が正しいかな。自分はとある人間の魂をベースにしてダークネスが造った存在しない人間、つくりものの人格。手駒……の、できそこないさ。自分には、本来なら残るはずのなかった前世の記憶がかすかに残っている。だからこうして体も与えられず、幽霊として捨てられてたんだけどね。ちょっとした理由があってこの場所に来ていた前世の自分は、最後の最後に力の一部をそのエースカードだったグリーディー・ヴェノムと共に封印して、この場所に隠した。たとえその記憶の大部分を失っていても、どこかにそのかけらが残っていた。だから自分は、ずっとこの廃寮に留まっていたんだ。今ようやく、はっきりと思い出せたよ」
『嘘……ではないな。この土壇場で自らの狂気に飲み込まれ、現実とその狂気の狭間が曖昧になったと
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