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レーヴァティン
第四十一話 大江山その八
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「幸いにして日本でもです」
「天然痘は流行ったがな」
 これは記録にもある、奈良時代はそれが特に酷く多くの者が倒れそれを収めようという考えが大仏の建立の動機にもなっている。
「ペストだの赤痢だのはな」
「流行っていません」
「江戸時代にコレラは流行った」
 この伝染病はだ。
「日本全土にな」
「明治にもでしたね」
「外国人から感染してな」 
 明治期には十八万人が罹患し十万人が命を落としたという。
「しかしだ」
「それでもですね」
「そのコレラでもすら西洋の疫病と比べるとな」
「ペスト等ですね」
「状況は遥かにましだったと読んだ」
 これは教科書から読んだことだ。
「そのペストだ」
「ペストになりますと」
 良太も苦い顔で話した、この病については。
「恐ろしい状況でした」
「欧州の三分の一が死んだというな」
「それも何度も流行しています」
 ローマ帝国の頃から度々流行している、ユスティニアヌス帝期のビザンツ帝国では帝都コンスタンティノープルを中心に大流行し深刻な被害を与え西欧では百年戦争を中断にも追い込んでもいる。他にも度々流行し多くの犠牲者を出しているのだ。
「あまりにも衛生状況が悪かったので」
「川の流れも穏やかだったし地域と地域を阻む山も少なかった」
「日本と違い」
「そのせいでだったな」
「そうした事態になりましたが」
「日本、そしてこの島ではか」
「そうした事態にまでは陥らないでしょう」
 疫病が起こってもそれがペストの様に大流行する様なことはというのだ。
「流石に。ですが」
「それでもか」
「屍が液妙の源になるのは事実でして」
「少しでも流行するとだな」
「よくありません、数人位なら山の獣や虫の餌にもなりますが」
 それでもというのだ。
「数百人になりますと」
「多過ぎてか」
「処理する必要があります」
「だからだな」
「成敗した後は焼きましょう」
「では術で、でござるな」
 術も使える智がここで言った。
「焼くでござるか」
「そうしましょう、骸を集めてです」
 そのうえでとだ、良太は智に話した。
「そのうえで」
「骸を焼いて疫病を防ぐでござるか」
「そうしましょう、まあ骸を館に入れて館ごと焼けば」 
「骸は術で呼び寄せて集められるでござる」
「そうすればいいですから」
「骸は館ごと焼く」
「そうして供養もしましょう」
 謙二の言うこれも忘れない良太だった。
「そうしましょう」
「さすれば」
「わかった、ならそうしよう」
 英雄も賊への無慈悲さをそのままにしつつも良太の言葉に頷いた。
「疫病を起こさせてはそれも民や国の災厄になるからな」
「それでは」
「賊共の骸は焼く」
 ここではっきりと決めた英雄だった。
「その館ごと
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