第四十一話 大江山その七
[8]前話 [2]次話
「その魂はです」
「供養するか」
「はい、それは忘れてはなりません」
「魂をそうすることはか」
「それが僧侶の務めなので」
「悪事を重ねた者達でもか」
「確かに悪事は重ねています」
ものを盗み人を着ずつけ時には殺す、これを悪と言わずして何と言うかというのである。これはどの教えでもそうだ。
「ですが命であることは同じ」
「地獄に落ちる様な屑でもか」
「ですから供養はです」
「忘れないのか」
「それだけはしませんと」
如何に成敗すべき邪な者達でもというのだ。
「なりません」
「それが仏に仕える者の務めか」
「拙僧はそう考えています」
「成程な」
「そうしたお話は」
「俺はどうでもいいと思っている」
これが英雄の考えだった。
「極悪非道の屑はだ」
「殺してもですね」
「供養なぞせずだ」
それに値しないというのだ。
「骸も放ってだ」
「捨て置く」
「腐らせていればいい」
これが英雄の悪人への考えだった。
「一行にな」
「そうしてもですね」
「俺は平気だ」
心が痛まないというのだ。
「屑は屑らしくだ」
「地獄に送ってもですね」
「供養なぞ一切する気も起こらない」
「それが貴方のお考えですね、ですが拙僧はです」
「そう考えているか」
「はい」
そうなるというのだ。
「私としては」
「そうか、それならだ」
「それで、ですね」
「するといい」
英雄は謙二を止めなかった、こちらも一切だった。
「御前の好きな様にな」
「あくまで貴方のお考えで」
「他人の供養まで言うつもりはない」
それも一切、という言葉だった。
「それは好きにすればいい」
「それではその様に」
「屍は燃やしておくことです」
これは良太の考えだった。
「つまり火葬ですね」
「骸が腐るとそこから疫病も流行るからか」
「この東の島は疫病が流行りにくいですが」
「何かとな」
「衛生もいいですし」
このことは西の島もだ、当時の欧州と比べるとだ。
「それはいいですが」
「しかしだな」
「はい、やはり疫病の元になるので」
「だから骸は常に焼いていたか」
「銭に変わらない、若しくは食べないものは」
「そうだったのか」
「あまり多くの骸が出ますと」
それならばというのだ。
「やはりです」
「疫病を防ぐ為にか」
「全て焼いた方がいいです」
「それも国の為、民の為だな」
「この東の島では疫病は天然痘位しか流行していない様ですが」
「それは俺達の世界と同じだな」
「はい」
まさにとだ、良太は英雄に答えた。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ