暁 〜小説投稿サイト〜
新訳紅桜篇
20 修羅
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街角の色めく
乙女らの縄張り
さうざうしきおさげ
回風(まわりかぜ)に揺れて---


耳障りな誘惑(ゆふはく)
花椿の(かほり)
雲のなき午後には
(われ)の修羅が(さは)ぐ---


焼けつく思ひは 憂ひ募らせる
重なる面影を 見つめては項垂れたりける
(誰ぞ知りたる、吾炎(わがほのを))---



_ 誰が知るだろうか、私の心に棲むこの獣に
気づいてくれるだろうか、私の心の苦しみに_



2人の三味線にあわせて、
どことなく哀愁の漂う歌声が、響く。





演奏が終わると、聴衆は盛大に拍手を送ってくれた。

_「素晴らしかった、」

_「心に沁みました、」

_「もっと聞かせてください、」…




もっと、と願ってくれるのはありがたいが、このままでは何のためにここまで来たか、分からなくなる。


_「ありがたいお話ですが、今回は惜しくもここまでと致しましょう。
ですが、またいつかその機会があることを願っております。」


そう、確か私がこの曲を聞いたとき、頭にふと思い浮かんだのは、晋助…彼の姿だった。

彼の(なか)に棲むその生き物は、きっと(しゅら)に違いない。



しばらく失礼いたします、と断って、
船の見学に出掛けた。



袖から煙管を取り出して、のんびり散策していると、
しばらくして、神威に会った。

…正直、彼に出くわすとロクなことがない気がする。


だが、話しかけられてしまっては、まずは逃げられない。

_「あ、零杏サンだ、」

と、きれいな声で話しかけられる。

_「あら、神威さん。」

_「どうしたの?パーティー抜けてきたっぽいケド。」

_「ちょっと歩きたくなっちゃったのよ。
私、じっとしてるのが苦手ですから。」


嘘だ、ただこの船に興味があったからだ。


_「へェー、そうなんだネ。
そうだ、さっきの三味線と唄の演技、とっても良かったネ。一回しか聴いたことなかったけど、
アレは最高だった。」


 気付けに煙管を一服。

_「ホント?それはどうも、
感謝申しあげますわ。」



私の煙管を見て、ねェお姉さん、と彼が声をかける。

_「零杏サン、シンスケみたいなものを吸うんだネ。」


シンスケ…?
晋助?

_「高杉晋助のことかしら?
鬼兵隊総督のこと?」

_「そうだヨ。」

_「あ、そうそう。この煙管はシンスケにはまだ内緒なの。持ってるのはお揃いだけどね、」

_「へェー、今度晋助に会ったら
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