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名探偵と料理人
第十話 -龍斗の悩み-
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いい。「この」新ちゃんは物語で見ていた「工藤新一」じゃない。このまま「コナン」になるのを何もせずに待ってていいのだろうか――


「なあ、龍斗。何に悩んでるん?」
「え?」

あの後解散し、いつものように帰宅し夕食をとった。その後、部屋で寛いでいたのだが風呂に入った紅葉が俺の部屋を訪ねてきて俺にそう言った。

「カラオケが終わった後に蘭ちゃんの大会の話のあとや。思いつめた顔してやんか。一瞬やったしすぐ取り繕ってたけど他の三人も気付いてたと思うよ?けど多分蘭ちゃんの心配してるって勘違いしてたみたいや」
「悩み……悩みの心配をされたのなんて初めてかもな」
「龍斗、あの子たちのお兄ちゃんみたいなことになってたやろ?多分三人は付き合が長くてずっと頼れるお兄ちゃんやって心に根付いてるんや。うちはこの一月ちょっとやけど龍斗とずっと一緒におった。ずっと見てた。そん中でいいとこがいっぱいあってどんどん好きになった。やけど、なんでもない朝は意外と弱くて目覚ましを三つもかけていること。忘れ物をしたりしても何とか誤魔化そうとしたりする癖があること。料理に没頭して朝になってたことに気付かなかったこと。着替えを持っていかないでお風呂場に行ったりすること。他にも一杯いいとこも悪いとこも知ったんや。やから、あの顔は悩みがあるんやってウチはそう思った……って龍斗!?」

俺は、つい紅葉を抱きしめていた。本当に俺のことをよく見ているんだって。俺はこの子のことを好きになって心からよかったとそう思う。

「ありがとな、紅葉。心配してくれて、気づいてくれて」
「未来の旦那さんを支えるのはお嫁さんとして当然のことや」

俺は紅葉を離し向き合った。そして話す事にした。

「なあ、紅葉。俺はこれから新ちゃんにとても大変な苦難が起こることを知っているんだ。下手をすれば命を落とすほどの。それがもう近づいてきているんだ。それを止めることはたやすい。けれどそれは新ちゃんにとって今後の探偵として、長い人生において大きな糧になることも知っている。探偵は時に自他に関わらず命を周りを巻き込む危ないこともあることを実感として本当に気づき、探偵としての在り方にすら影響が起きるんだ。そして困難に立ち向かう気力を得る。今ならまだ止められる。安全か、成長か。おれはどっちの道を勧めたらいいんだろうな」
「……それは。難しく考えすぎや。龍斗」
「難しく?」
「いつもの龍斗なら真っ先に安全を取らせるはずや。だけどそうしなかった時点でもう答えは出とるやろ?」
「……だが」
「さっき、みんながお兄ちゃんやと思ってるって言ったけど龍斗もそうや。みんなこと妹や弟やと思てる。だから守ってやるって気持ちが強すぎるんや。けどな?夢に歩き始めた人に過剰なおせっかいは逆に邪魔になるんやで?それにウチも今の
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