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名探偵と料理人
第十話 -龍斗の悩み-
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めば噛むほど甘みが濃くなって!どこのお野菜なん!?こんなの食べたことあらへん!」
「このスープも野菜の優しい甘みがしっかりとあっていくらでも飲んでいけそうな透明感がありながらも思わず噛んでしまうほどの重厚感も調和している!」

二人は食べる度に料理を称えてくれて、それでいて持つ箸は止まらずどんどん皿を空にしていった。そして二人はメインのハンバーグに手を付けた。二人して言葉もなく唯々手を動かし。気づけばすべての料理を綺麗に平らげてくれていた。

「「……ごちそうさまでした」」
「はい、お粗末さまでした。どうでしたか?今夜の夕食は」
「ええ、先ほどの失言深くお詫び申し上げます。ですが、「豪華」「歓迎」と言われてキッチンに向かわれたのに出てきたものが何の変哲もない料理だったものですから。お嬢様への歓迎はこの程度なのかと邪推してしまいました。重ねて謝罪申し上げます」
「でも。今まで食べてきた龍斗クンの料理の中で一番おいしかった。普段のパーティの時は手を抜いてるん?」

食後の紅茶を飲みながら紅葉はそうたずねてきた。

「いや。手を抜いているつもりはないんだけどね。俺の最も得意な料理は「家庭料理」なんだ。だけどそれはパーティで求められるものじゃない。それと……ね。今日は特殊な技術をふんだんに使ったから。因みに今日の食材は俺が目利きしてはいるけど商店街でそろえたものだよ」
「特殊な技術?それに商店街って……」

俺はそう言って席を立つとパックに入った二個のトマトを冷蔵庫から持ってきて、キッチンにより包丁をとり二人の元に戻った。

「これ、二個で300円のトマト。まあ一般的にはちょっとだけ高めの物だけど高級ってものじゃない」
「伊織?」
「ええ。龍斗様のおっしゃる通りです。一般家庭の方が日常的に食べるものですね」

流石に食材の買い物の経験がないのか伊織さんに聞き、この値段が普通のトマトの値段であることを教えてもらっていた。

「それで、そのトマトがどうしたんです?」
「まあ見てて。とりあえずは一つ」

そういい、俺は一つのトマトを綺麗に六等分した。そしてもう一つのトマトを手に取り、集中して細かに包丁を入れ始めた。その動きは包丁が消える程に早くその様子を見ていた二人は目を丸くしていた。

「……さてと。このくらいでいいかな。このトマトも六等分してと。後でしっかり話すからまずは最初に切った方を食べてみて。その後に俺が「調理」したトマトを」
「え、ええ。……うん、普通のトマトやね。ちょこっと皮が固いけど」
「はい、私も同意見です。そしてもうひとつを……!!」
「なんやこれ、全然味が違う!!皮もやわらなってるし甘さも酸味も絶妙になってる!それにあんなに包丁を入れていたのに綺麗に形が残っていることもどういう事なん!?」
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