プロローグ 1
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「うっぷ、飲みすぎた。でも、今日の居酒屋は料理が旨かったな」
そうひとりごちたのは今日誕生日を迎え、めでたく30歳となった青山剛生(あおやまたけお)だ。仕事の同僚に誕生日を祝われて先ほど帰宅したばかりだった。去年両親が相次いで亡くなり、相続した一軒家は深夜ということもありとても静かだった。
「もう俺も30か。なんだかなあ」
仕事も順調で同僚も気のいい奴らばかり。彼女こそいないが周りから見れば順風満帆な人生に見えるだろう。だが、彼は生まれたときからずっと何かに満たされない感覚を味わってきた。幸い両親がしっかりしていたこともあり、非行に走ることもなく善人に彼は育った。
「この歳まで厨二くさい考え方だな。やめやめ。風呂入ってさっさと寝よ。明日は土曜日、やっとコナンの映画を見に行けるし」
明日、名前の読み方を変えると同じになる青山剛昌作の「名探偵コナン」の映画「から紅の恋歌」を剛生は見に行く予定だった。原作漫画を全て購入して、劇場版DVDも買い揃えるくらいにはファンであった。部屋にはそれ以外に「トリコ」や「東京魔人學園シリーズ」の漫画が本棚に陳列されていた。
「さてじゃあ、寝るかな。おやすみなさい」
誰もいない部屋でそうつぶやくと剛生はそのまま眠りについた。
「やあ」
剛生は気が付くと真っ白い空間の中にいた。正面にはその白の中でも殊更白い存在がいた。
「どこだこれ?へんな夢だな」
「夢じゃないさ。ここは輪廻の狭間さ」
「そういう設定の夢?なんか二次創作にある転生の前ふりみたいだな」
「その通り。君ももう分かっているんじゃないのかな?」
「……」
そう、剛生は奇妙な納得を覚えていた。突拍子もない夢のような状況なのにこれが現実であることを、自分は死んだであろうことを。
「なんなんだよ、意味わかんねえよ…」
「君が30歳の誕生日を迎えたとき、ここに来ることは予め決められていたことさ。魂が現世に行った時からね。足元を見てごらん」
白い存在に言われるがまま視線を下に向けると、そこには大きな砂時計のようなものが存在していた。上には色々な色をした液体のようなものが存在し、砂時計の腰を通ると無色となり下に溜まっていた。溜まったものは少しするとどこか消えていった。
「上に存在するのは、現世から帰ってきた魂。そして下の無色透明なものはこれから現世で新たに生まれる魂だよ」
白い存在は自らを魂を管理する立場につくものだと言った。白い存在による魂とは本来無色透明なものでそれが現世でいろいろな経験を経て色が付く。その経験は輪廻においては不要なもので砂時計の腰の部分にあるフィルターで濾しているんだそうだ。
「だけど、ここ最近人が増えてフィルターが濾しきれなくなっ
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