14話→社長の真意と始まりの鐘A
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さて、ここは考え所だ。
言うまでもなく、相手がここまで手札を開示しているにも関わらず、『いやー、きついっす』的な返答はアウト。
同時に、下手に同意すれば良いように使われ『ボロ雑巾にしてやるよ……』ルート。
だが、である。
社長の言葉を反芻する。
奴は『俺を選んだ』といっていた。その趣旨は……
短い思考時間を終わらせ、太郎は社長に問う。
「社長、『亡国企業』ではなく、貴方が僕に望む仕事は何ですか?」
どんな組織でも、その組織をある程度維持、拡大するためには、必要なものがある。
リーダーシップ、才覚、運、そして……己を前に突き動かすガソリンの役割を果たす、自身の欲望、『我欲』である。
「ほう、私が従順な『亡国企業』の犬とは考えないのかね?」
「少しだけ悩みましたが、その線はないですね。そういった組織の中で安らぎを得る人間が、今もまだ、こんな大きな会社のトップとして君臨する旨味はない。今まで稼いだ金や人脈を使って、その亡国企業とやらに近い企業で、責任のない役職についてノンビリ過ごせば良い」
答え合わせをするかのように、太郎は社長に説明していく。
「何故そうしないのか?もはや、苦労しなくても好きに生きれる財力や権力はあるのに、その手法を取らない理由として考えられるのは……」
社長の机に近づき、内緒の話をするように顔を寄せて答える。
「貴方が『亡国企業』に入った理由が、世界規模の組織を頼るためではなく、自分の目的のために利用するためだから、違いますかね?」
流石にエスパーではないので、その中身までは分からないが。
話の最後を、そう冗談めかして締めて、彼の反応を伺う。
「…………くくっ、いやはや、良い読みをしてるよ」
おお、合ってた。
内心で安堵する太郎の前で、社長は答えを開示する。
「正直な話、まっとうな幸せを望むなら、君の言う通り、今の地位で十分に過ぎる」
ただね、と彼は続けた。
「君も薄々気づいていると思うが、私は真っ当ではない。そのような振りをしてはいるがね」
大変失礼な話であるが、それは知っていた。
そもそも、自分で言うのはなんだが、俺達のような若輩者が発明した(勿論言葉は尽くしたが)怪しげな『未知の兵器』の製造に、少なくない金額を突っ込み、工場のラインまで動かしている。
ちなみに現時点でこの会社がIS事業に支払った金額は10億、小さな会社なら余裕で破産する金額だ。
なんの成果もまだ出していない事業に供出する金額と考えると、異常である。
恐らく役員会でも叩かれているはずなのに、平然としている。
この時点でマトモではない。
「まあ、君のプレゼンをみて、ある程度理解してくれている役員もい
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