レッドローズ・バレンタイン
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うぞ、今年分の感謝の気持ちです」
隠しておいたチョコレートを渡す。箱を包んだ赤と黒のラッピングは、少し派手過ぎやしないかと不安だったのだが、友人から「だいじょぶだいじょぶ! ちょっとくらい派手な方が伝わるって!」と言われ、結局これにしてしまったのだ。
「ありがとう。あー、その、なんだ。悪いな、毎年」
「いえ、こちらこそ。毎年私の我儘に付き合ってもらってすみません」
「謝るのはこっちの方だよ。俺なんかにくれる事を、ずっと感謝してる……その、開けてもいいか?」
「はい、勿論」
ラッピングを外すソレイユの姿を、エルシャはにこにこと笑みを浮かべながら見守る。その内心は激しく動揺していた。今年のは、少しだけ恥ずかしいのだ。凝り過ぎたというか。
「……っ!」
ソレイユが大きく目を見開く。
箱の中に入れていたのは、サイズ的には片手を広げたくらいのサイズのチョコレートだ。だが、その外見は極めて精巧――薔薇だ。チョコレートで作った、薔薇の花。赤い色のチョコレートを作るために、色々な材料を買い集めて、試した。ローズエッセンスも使ってみている。
赤い薔薇を表現したつもりなのだ。
赤薔薇。花言葉は、「貴方を愛している」。いつまでも、いつまでも、ずっとソレイユを想っている、自分の心を表した。
「その……どう、でしょうか。私の気持ちを、込めたつもりだったのですけども」
「あ、ああ……嬉しいよ、ありがとう。うおー、もうパテシエとかショコラティエに成れるレベルなんじゃねぇのかこれ」
一般女性が作れるものってレベルじゃねーぞ、などとぶつぶつ呟きながら、「食べるのがもったいないなぁ」とソレイユは笑う。
――直後に、真面目な表情に変わった。
「……?」
「……あー、その、なんだ。こうやって受け取ったんだから、俺も覚悟決めねぇとな、って改めて思ってただけだよ」
不思議そうな表情の自分を見て、ソレイユは苦笑い。立ち上がると、鞄を空ける。
大切に保護された、長いケース。開けば、中から出てきたのは薔薇だ。エルシャが作ったチョコレートと同じ、赤の。
「俺の故郷でも、今日は女性から男性に贈り物をすることが多いんだけどさ。場所によっちゃ、男のほうがやるときもあるんだ。だから、まぁ、そのつもりで買った。テーマがエルシャと被るとは、思わなかったけどな」
「君を愛している」、と、ソレイユは言って。
それから、エルシャの手に薔薇を握らせると、すぐにジャケットの内ポケットに手を入れて。
そこから、小さなケースを取り出した。
手渡されたそれを、開く。
入っていたのは、銀色の指輪だった。中心に、深紅の線が入っている。
「これ、は……」
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