レッドローズ・バレンタイン
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花ことばを俺に教えていく。
俺が想像していたよりも、その世界は奥深い。予想だにしない言葉や、正反対の意味の花ことば二つを持つ薔薇もあった。
時折俺でも知ってるのが出てきたりはするが、多くは知らないものばかり。新鮮で、少し楽しかった。
「白は『純粋』とか『私はあなたに相応しい』、とか。つぼみだと『恋をするには早すぎる』なのにね」
「へぇ、つぼみと開花後で違うんだな」
「うん。薔薇はそういうの多いよ。ああ、でも――」
そう言って、銀色の花売りは、一輪の薔薇を手に取る。
「赤薔薇だけは、あんまり変わらないかも」
「ほう。なんか赤いのだけは聴いた事ある気がするぞ。『曇りなき愛』とか『純粋な恋』だっけ?」
「それは蕾の方」
ふふ、と微笑む彼女は、これまでの無表情とのギャップもあって、異様に色っぽいというか、美しく見えた。なるほど、彼女の旦那さんはこれで堕ちたんだろうな、などと思いつつ、俺は彼女の次の言葉を待つ。
「赤薔薇の花ことばは、『あなたを愛している』。つぼみの花言葉が、『曇りなき愛』――どっちも、飾らない愛の言葉」
花売りの少女は、そう言って、薔薇を元の場所に戻す。
その光景を見ながら、俺は脳内に電撃の奔る様な衝撃を受けていた。
――これだ。
俺が探していたのは、多分、これだ。
いや、何らかの助けが無いと行動に移せない俺のふがいなさが無くなるのが最善手なのだろうが――でも、エルシャに、俺の気持ちを伝えるには、きっとこれが一番だ。
「あの、すみません」
「……? なに、改まって。今までため口だったから、そういう客かと思ってたのに」
「いや、まぁ、あれはその場の流れというか……とにかく。この赤薔薇、一本ください」
***
「ただいま」
「お帰りなさい、先輩」
ドアの開く音と共に、ソレイユの声が聞こえる。エルシャは笑顔で、彼の帰りを迎え入れた。ギルドの制服は脱いでいる。今日は、着替えを持って行ったらしい。
「わりぃ、遅くなったわ」
「いえいえ。遅くなった、と言っても、十分程度ですし」
「マジ? もっと遅れたと思ってたんだけどな……ちょっと寄り道しちまって」
晩御飯、もうできていますよ、と、彼をいざなう。
今日はこの後、甘いものを渡すのだから、少しだけその方面は控えめな内容にしてみた。ただし苦いものは苦手なのを知っているので、それは無しの方向で。
ソレイユはいつもと同じように、美味しいと食べてくれるけど、今日は少し緊張している様に見えた。この反応だけは、何年経っても変わらない。実際緊張しているのだ、と、以前言っていた。毎年この時期になると緊張するのは男の性だと。
「はい、先輩。ど
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