レッドローズ・バレンタイン
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で想う。
このチョコレートを渡されたとき、ソレイユはどんな表情を見せてくれるだろうか、と。博識な彼なら、無反応という事はあるまい――
***
「結局なんも思いつかんかったんじゃが……」
などと呟きながら、俺はギルドを出て帰路につく。いやー、何かちょっとくらい良いアイディアが浮かばねぇかなと思ってみたけど全然そんなこと無かったね。そう簡単にインスピレーションは降りてこないってことか。あたりめーだわな降りてきてたら苦労してないっつーの。
しかし……それにしても困った。
俺の単純な希望ではあるが。
プロポーズは、遅くても聖アンリエッタ祭の夜には行いたいと考えているのだ。五年前、俺がエルシャから想いを伝えられたように、俺も彼女に想いを告げたい。感謝と愛情と、これからへの希望を込めて。
だから、それまでに何とかして勇気を奮い起こしたいのだ。のだが――よくよく考えてみれば、俺がこれを思い立ったのは既に半年くらい前である。にも拘わらずこれである。お察しだった。
「はーつっかえ。まるで役に立たねぇじゃねーか俺の脳……どうすりゃいいかな……ん?」
足りない頭をひねらせながら歩いていると、ふと、甘い香りが鼻梁をかすめる。
見れば、家までの道でいつも通っている商店街に、今日は花屋の出張店舗が出ているらしかった。銀髪と青い目の無表情な女性が、色とりどりの花を売っている――のだが、女性のやる気のなさそうな表情ゆえか、客は誰も来ていない。
というか、よく見たら売ってるの全部同じ花じゃねぇか。色が全然違うから分からなかった。
「薔薇か……こんなに種類が沢山あるんだな」
「らっしゃい……らしいよ。全部花ことばも違うんだって」
「ほーん……うおっ!?」
気が付くと、店先に居たはずの女性が、いつの間にやら俺の隣に立っていた。若い。十六くらいかと一瞬思っていたのだが、存外に顔つきが幼い。まだ十三歳かそこらの様に見える。女性というより少女、幼女の部類だ。
「夫が言っていた。こういうの詳しい」
よくよく見れば、左手薬指には指輪が光る。マジで既婚者らしい。という事は見かけ通りの外見ではない――合法ロリというやつか。
「俺はそういうのあんまり詳しくないなぁ……つーか、黒い薔薇とかあったんだな」
「うん。花ことばは『あなたは永遠に私のモノ』」
「なんだそりゃ。ヤンデレか」
時々花ことばを考えた奴は、なんというかこう、現代人の性的嗜好に突き刺さるワードばかりを選んでくるな、と思うのだが、あいにくと俺はツンデレの方が好きである。理由はってそりゃ昔のエルシャが若干毒舌系のツンデレ――いやこの話はよそう。
少女は、一輪一輪、様々な色の薔薇を手に取ると、その
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