レッドローズ・バレンタイン
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たような反応を示していた。失敗しちゃったな、嫌われたらどうしよう、などと大変不安だったのを覚えている。
今年は、そういった類のリクエスト、というか、独り言を聞いたりはしていない。
「ありがとうございます。ですが、今年は自分一人で作ろうかな、と」
「そっか。じゃぁ、皆にもそう伝えておくね」
「はい」
自然と口元が緩む。
魔法学校に通っていたころは、同姓・同年代の誰かと、こうやって話すことができる日が来るとは思ってもみなかった。ソレイユ以外の誰もがエルシャの事を気味悪がったものだ。ソレイユは結局、卒業までに何人か友人ができたようだったが、全員から一度は「邪神の娘なんかとは別れた方がいい」と忠告されたらしい。
その度に、ソレイユは「俺はエルシャが好きだ。お前らに口出しされる謂れはない」と跳ねのけてくれたという。その時の彼の姿がありありと想像できて、少しだけ、嬉しい。
「あーあ、あたしも欲しいなー、エルシャの彼氏みたいなかっこよくて素敵な恋人! こう、具体的には笑顔が素敵でちょっとミステリアスな感じの!」
「薬草学の先生みたいな?」
「そうそう、まさにその通りで??ふえぇぇっ!? なななななんで分かったの」
「いつも遠くからぼんやりと見ていらっしゃるので」
「うえぇぇ、バレてた……」
表情をくるくると豊かに変える友人。その姿に、思わず声を出して笑ってしまう。
こんなことを、許してくれる友人に、感謝しなくてはならない。これまでエルシャの周りにいた同姓は、彼女が笑ったら気味悪がる人たちばかりだった。
――ソレイユ先輩が居なかったら、こんな生活を送ることもできなかったのかな。
時折、心の中でそう思う。
本当は――本当は、死のうか、と思っていたこともあるのだ。魔物との戦いの果てで、どこかの迷宮で力尽きてしまおうか、と。
けれど、ソレイユが生かしてくれた。彼が、自分に『人生』を暮れた。
色々な、新しい景色を見せてくれた。味わうことは無いと思っていた、無数の幸せをくれた。欲張りな願いかもしれないけど、できれば、もっともっと、いろんな景色を一緒に見ていきたい。
そうだ、と、思いつく。
今年のチョコレートは、ちょっと外観を凝ってみよう、と。
「ううー……い、今のは皆には内緒ね」
「はい。でも、一つだけ条件です。制作のお手伝いは必要ないんですけど――ちょっとだけ、調べものというか、材料を買うのを手伝ってほしいな、と」
「うわー、策士というか意地悪というか。まぁでも、うん、いいよ。というか、口止め料関係なく手伝うよそのくらいなら」
「ありがとうございます。えっとですね――」
そう言って、求める材料の名前を告げながら、エルシャは心の中
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