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【掌編置場】コーナー・オブ・テキストレムナンツ
レッドローズ・バレンタイン
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じゃぁ勿論ない。ブラック企業溢れる現代日本とは異なり、この世界(昔会ったなんか偉いらしい魔法使い曰く『ギガローカ』というらしい。転生する時に『アルカディアヘイム』って聞いた気がしたんだがあれはなんだったのか)は非常にホワイトである。中世ヨーロッパ風の世界観でありながら町は綺麗だし、最近は邪神族――俺の(俺のとか言っちゃったよ)エルシャ以外にも、この世界には何人かまだ邪神族がいる、という事をここ数年で知った。彼らの多くは勇者アンリマユとその永遠の恋人、聖女アンリエッタの子孫の血を引く、とか、或いは別の邪神の血を引くらしい??への差別意識も大分減ってきた。何があったのかは省くが、まぁ簡単に言えば邪神族のお蔭で世界が救われたのである。

 そんなこんなでいい世界なのだ。こんな役に立たない産業廃棄物でも、「魔物の情報を覚えるのが早い」とかいう、地球でゲームのモンスターの名前や特徴を網羅するために培ったクソどうでもいい技術を買われてギルドの受付に成れる世界なのである。

 なのだが。
 なの、だが。

 ……あああ、話を引き延ばしてもどうにもならん。この際ぶっちゃける。


 
 ――結婚、したいのである。

 誰とって、そりゃ勿論エルシャと。


 いや、何を急いでるんだ、と思うかもしれん。地球における交際開始から結婚までの平均年を知らないからどうにも言えんのだけども……その、なんというかだな。
 
 やはり彼女とはどちらかが死ぬまで一緒に居たいのだ。子供も欲しいし、何なら孫の顔も見たい。

 極めて自分勝手な願いだし、俺が思うべき事じゃないのかもしれないけど。けれども――けれども、やっぱりそうしたいのである。

 当然結婚生活にはお金がかかる。色々と準備が必要だし、そのうち新しい家も買わなくちゃいけなくなるかもしれない。子供が生まれるなら、その養育費も必要だ。平和極まるこの世界でも、「養育費が無いから子供を捨てる」という話はあとを絶たない。学生時代の友人に、そうやって出来た孤児をあつめて育てている奴がいる。人の精神を落ち着ける魔法の使い手で、穏やかな良い奴だったんだが最近はあまり会っていない。元気にしているだろうか??……また話が逸れた。悪い癖だ。特に伏線でも何でもない無駄話だから忘れてくれ。

 まぁとにかく、結婚の為に資金を貯めるべく、これまで働いてきたわけだけども。実際ギルドの受付は思った以上に給料が良くて、俺が手にしていいのかと不安になるくらいには相当な貯金があるのだけども。実はマイホーム買ってもまだ二十年くらい遊んで暮らせたりするんだけども。やべぇなギルド受付。

 ……勇気だ。俺に足りないのは勇気。
 
 エルシャに、「結婚してくれ」と言えないのだ。

 この世界にも結婚指輪の概念はある。実は
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