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サメに手足を食いちぎられた恐怖の魚釣り
サメに手足を食いちぎられた恐怖の魚釣り
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が石鹸のようになる。腐敗の過程でカニやフナムシ等に食されている場合も多い――
これ以上述べれば、私自身も嘔吐しそうになるから、この話は、「これで、おしまい」。
「これで、おしまい」と臨終の時にいったのは、江戸時代末期から明治時代初期の武士、政治
家であり、山岡鉄舟、高橋泥舟と共に「幕末の三舟」と呼ばれる、私が尊敬して止まない勝海舟だ。もっとも、私が尊敬している人を列挙すれば、アルベルト・アインシュタイン、ホーキング博士、シュレーディンガー、サルトル、アンドレ・ブルトレ、ゲーテ、ハイデガー、プラトー、アリストテレス、ハッブル……など大勢の人がいるが。
さて、いよいよここで我々釣り仲間が遭遇した災難についての話をしよう。
 季節は、秋を司る竜田姫≪たつたひめ≫が、冬の女神である白姫≪しらひめ≫にそろそろバトンタッチをしなければ……と考えだした頃だった。
恐ろしい人身事故が起きた場所は、沖合約二キロメートルにある、コンクリート製の大規模な
直方体をした消波設備であった。水面から天辺までの高さは十メートルぐらい、横幅五十メートルぐらい、奥行十メートルぐらいで、手前に一か所だけ階段が設置されている。完成して未だ日が浅く、真っ白な威風堂々としている消波設備だ。
 黒っぽい背と銀色に輝く腹を見せる五十センチメートルオーバーのチヌが、鳥取港沖に建設された消波設備付近で群れている、という情報がどこからともなく、我々釣り仲間の耳をくすぐった。早速、そこで釣りをする計画を釣り仲間と協議した。
 惨事が起きた場所とは、到底信じられないが、思い出しても、甚大な恐怖に心を黒く塗り潰されるような感覚に陥る。私ばかりでなく被害に会わなかった仲間達も、今でもそういう感覚から脱していないだろう。それほどに、皆の脳の感光紙に焼き付いた、おどろおどろしい悪夢そのものだった。
 事前に調べると、当日の天気予報は快晴で、週間予報でも晴れのマークばかりだった。 
 釣行の日は、雲が一つもない透きとおるような青空が頭上にあり、地元で採用された子供売り場で働く課員の吉岡君が所有しているエンジンを搭載した小型木造船に乗せてもらった。
 所有者である吉岡君、私、日用品課主任大谷君、電器課主任吉田君、一般食料品課主任佐藤君、子供売り場主任で最年長である四十四歳の大田さんの計六人が乗った小型木造船で、コンクリート消波設備に着いた。眼の前で見る消波設備の大きさには、誰もが圧倒された。
 その高さは十メートルほどあった。だが、事前に調べていた通り、幸いにも天辺まで上がれる階段が設置されていた。各々が、四.五メートルある太くて丈夫な竿を二〜三本と餌の太いアオイソメ、少し濡らした新聞紙に包んだ池や湖で獲れる大きめの活けエビ等を持ち、大きな期待と急な階段を上ることで、私はバクバクと心臓が悲鳴を上げて
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