霊感体質の若者を襲う恐怖
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ども、腹ごしらえしないか? 学食でおにぎりを買ってくるよ。具はなんでもいいだろう?」
パートとして精一杯働いている馴染みのオバチャンに、無理を言って本来のメニューにないおにぎりを七つ作ってもらった。一万円札を手渡すと、いつもの様にバイバイをして足早に去った。
きっぷのいい『江戸っ子』気分を満喫したかったのだ。
ところが、先程の場所に戻って周囲を見渡しても、木田の姿は何処にも見当たらなかった。
「変だなぁー。俺に思考実験とやらを頼んでいたのに……。トイレでも行ったのかな? 少し待つか」
俺は、不満に少し苛立って呟いた。半時間ほどイライラしながら待っていたが、薄汚い白鳥にお握りを少しだけお裾分けして、全部平らげてしまった。それにしても、白鳥の食欲には目を見張った。確か、オジサンが定期的に餌場に好物を補充しているのに……。
汚れた水と一緒に、ピチャピチャと嫌悪感を惹起させる音を立てて、おにぎりを飲み込んでいる。一緒に飲み込んだ水はどう処理するのだろう? 家に帰ってから調べる価値は充分ありそうだ。
その日は、四時限目の俺が専攻している『経済学説史』に出席し、寄り道をせず一時間半ほどかけて、真っ直ぐ明石市の自宅へ帰った。
翌日の日経新聞を読んで、心臓が口から飛び出るほど驚愕し、同時に軽い眩暈に襲われたのだ。
木田は、日が変わろうとする十一時五十九分、大阪市福島区の自宅マンションから、飛び降り自殺をしていた。
その瞬間、錐で頭頂部をえぐられたような熾烈な痛みを憶え、木田の飛び降りた数分後の映像が、判然と脳裏に再現された。
それは、口に出すのも憚れるような酷い死に様だった。
駐車場の車に最初に激突したらしく、後頭部が砕け、顔面は腸が飛び出した胴体にめり込み、手足は壊れた人形のようにバラバラの方向を向いている。
白の車のボンネトに飛び散った大腸が、未だに蠕動運動をしており、血液と脳漿が体から噴き出して辺り一面に広がっている。
車と車の狭い間に、土気色になった遺体の真っ赤な両眼が、恨めしそうに宙を睨んでいる。
ドスンと大きな音がしたにも関わらず、どの部屋の明かりも消えたままだ。本人が生活していたマンションも同じだ。誰もまだ気付いていないようだ。
俺には、こんな経験は初めてだった。
木田の強い想念が俺に見せた数分,否、数秒の映像だろう。
翌日は友引のため、二日後の夜七時に、お通夜が執り行われることになった。酷く嫌な予感に襲
われた俺は躊躇していたが、日頃から親しく付き合っている友人の誘いを断りきれず、六時半頃、十九名と共にマンションの真新しい集会所に行った。
もう既に、二十〜三十名程列をなして、ご焼香の順番を待っている。やっと、俺達が、木田の両親にお悔やみを言い、ご焼香をさせて頂いて、値の張りそ
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