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霊感体質の若者を襲う恐怖
霊感体質の若者を襲う恐怖
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陽自動車道三木小野インターチェンジを入ってすぐに事故に遭ったらしい。全員が死亡した。
 ここ四〜五日、全然会わないなぁ、と思っていたが、まさか死亡していたとは……。
近しい人に起こる事は予見できないから、山口も俺とは親密な関係――恋愛関係にあったのかも
しれない。高校の時に成績が下がったのは、交際していた女性のせいにしていたのだ。あくまで、俺の責任として認めず、彼女達に責任転嫁して、自分を正当化していたのをこの時ハッキリと知らされた。皆に、心底申し訳なかったと、土下座しても良いくらいの迷惑を押し付けていた事を、各人一人一人謝りたい。
 山口の死は、体の大部分にぽっかりと大きな穴が開けられたように、一週間位、俺は何も手につかなかった。それほどまでに、彼女の存在が俺の体全体の大部分を占有していたのだ。
 もっともっと優しくしてやるべきだったと、後悔したがもう遅い。
 
 彼女の死を知らせてくれたのは、近くの女子大に通う従妹の梶 ユミだった。詳しい話をするというので、二日後の二時に、阪急N駅の南ある喫茶店で会う約束をした。でも、何故か山口に悪いような気がして、良心に少し痛みが走った。と言うのも、同年代の女性と密会する気がして、山口に後ろめたい気がしたからだ。
 ユミを好きになるような予感、俺には避けがたい未来の事実になる予感が、脳裏を掠った。

 山口は、怨霊となって俺を苦しめ続けるのだろうか?
 その疑問は、毎夜見る夢となって現実になってしまった。
 俺が眠っていると、山口は、般若のようにグロテスクに変化した形相で天井に現れ、その姿を見て、肌が粟立つような恐怖で全身震える。戒を授け成仏させるための葬儀もしたにも拘らず、行くべき所に行けていない。つまり、怨霊と化しているのだ。
 死に装束は茶色に変色し、しかも、ボロボロだ。
 凄まじい恐怖に胃が痛み強烈な吐き気がしてくる。
 その顔は、不愉快この上なく醜く歪み、眼窩から垂れ下がった二つの目は赤くただれ、真っ赤な粘液が糸を引いて滴る三つに裂けた青黒い舌を、口から出入りさせている。
 俺の顔に腐りかけた上半身の細かく千切れた肉片が落ち、猛烈な悪臭を放つ。所々白っぽい肋骨も見える。
 俺は金縛りにあい、身動き出来ず悲鳴すら出せない状態で一時間ほど恐怖に耐えるが、暗い淵に引きずり込まれ気を失ってしまうのだ。
 そんな悪夢を見て徐々に生気を失い、痩せていくのを不審に思った父は、俺に事細かに事情を
聞き、先祖の墓を守って頂いている浄土真宗の住職に相談してくれた。その結果、山口の俺に対する執着心と嫉妬心が相当強かったのだろう、四度もお祓いを受けた。
 お祓い(加持祈祷)は、本来は神道の祭祀で、仏教には元々祈祷の考え方がなかったが、神仏習合が進んだ結果、神職・僧侶共にお祓いをする者がいる。

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