憤怒のソリダス
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思える人達がいた。未来のために戦ってる彼らに想いを届けようと思ったから、心を込めて歌えた。本気の心を込めていたから、月詠幻歌もそれに応えてくれた。でももう、彼らはいない……この世界には想いを届けたいヒトがいない。だから今の私が月詠幻歌を歌ったところで、封印の効果は発揮しないよ」
「なんだと!?」
「歌はただ歌うだけじゃダメ、歌い手の想いを受け取ってくれるオーディエンスがいるから、心から想いを伝えたい相手がいるから、効果があるんだ。あなた達は私の歌の力を、表面の効果だけ見てて本質を全然理解していない。そもそも私はあなた達の望む偶像じゃない、万人に愛を向けられる性格じゃない。世界のため、平和のため、皆のため、そんな理由では歌えない。第一、あなた達の思い通りになんかなりたくないっての!」
「だから貴様はミッドを見捨てるのか! 貴様のエゴで世界を敵に回すつもりか!?」
「いけないか!? 世界を敵に回して! 大体、あなた達は私やニダヴェリールから何もかもを奪ってきた。今それらを返してほしいと言っても返してくれないとわかってるからこそ、これ以上奪われる前に私は何としてでも自由になる! 私の居場所を、あなた達なんかに決めさせはしない!!」
そう叫んだ私は切り取った看板を手に、屋上の縁に立った。私が飛び降り自殺をすると思ったのか、血相を変えてレジアスは引き留めにかかった。
「やめろ!! 早まるな! こっちに来るんだ!!」
「誰が行くものか。ラタトスクのようにヒトを人形としか見てない奴らのいる所なんか、まっぴらごめんだ!」
否定の言葉をレジアスに盛大に投げた私はその直後、ヘリポートからエナジーを爆破させるのと同時に飛び降りた。慌てて縁に駆け寄ったレジアスが見たのは、飛距離を稼いだ私が落下中に看板に足を着けて、地上本部内の他の建物の屋根に着地し、そのまま上をボードのように滑っていく姿だった。
「こ、これだけ聞かせろ! マキナ・ソレノイドを殺した高町なのはの首を差し出せば、月詠幻歌を一回歌う分の対価になるか!?」
「さあね! その時考えるよ!」
驚きながらも情報を求めたレジアスの姿が一気に遠くなっていく中、私はガーッ! と少し耳障りな金属音を発する看板ボードのバランスをコントロールし、中々凄いスピードで外へ脱出しようとしていた。
「たいやっ♪」
『まさかこんなアクロバティックな方法で脱出しようとは、シャロンもいざとなれば大胆になるんですね!』
「よっ、ほっ! でもこれ看板だし、まともなボードじゃないからかなり操縦が大変だよ」
『そう言いながらも乗りこなしてる時点で十分凄いんですが……。っと、屋根が途切れます。次のジャンプ……今!』
「イヤッッホォォォオオォオウ!」
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