299部分:第二十二話 消える希望と灯る希望その十二
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第二十二話 消える希望と灯る希望その十二
それでだ。首を傾げさせてだ。
パンを食べつつだ。こう呟く様にして言った。
「そうしたものがあって。他には」
「他にはですね」
「ビーフソテーやステーキも英吉利だったのでは」
「はい、そうです」
「しかし料理は美味しくない国なのですか」
「そう欧州各国から言われています」
とりわけ仏蘭西からだ。英吉利のことは常に悪く言う国だ。しかし料理のことはだ。事実であるというのはだ否定できないことだった。
しかし何故そうした料理が日本で好評なのか。それは。
「それは海軍だからです」
「海軍だから」
「そう。英吉利海軍はです」
そのだ。英吉利海軍ならばだというのだ。
「料理がいいのです」
「海軍といえば船ですね」
真理はすぐにそのことを察して述べた。
「船の中だと」
「外には出られず入浴もままなりません」
とかくだ。ストレスの溜まるのが船の中である。航海にはそうした苦労も伴うのだ。
だがその中にいればだ。どうなるかというのだ。
「ですから食べることに楽しみを求めますので」
「それでお料理がよくなったのですか」
「はい」
そうだとだ。義正は微笑んで答えた。
「そうなるのです」
「それでなのですか」
「ビーフシチューにカレー、そういったものは海軍から入りました」
帝国海軍からだ。臣民の口に入るようになったのだ。
「帝国海軍は英吉利海軍に教わったので」
料理もだ。そのロイヤルネービーから学んだというのだ。
「そうなのです」
「成程。海軍はですか」
「料理がいいのです」
「では海軍では朝食だけではないのですね」
「どの食事もいいのです」
昼食も夕食もだ。いいというのだ。
「しかも食事中には音楽も奏でられました」
「それはまた豪勢ですね」
「そうですね。食事に音楽が加わるとなると」
「それが英吉利海軍ですか」
真理はそこにだ。憧れを見た。
そのうえでだ。今度はボイルドベジタブルを食べた。そうしてだ。
その野菜にもだ。こう言ったのだった。
「では。今は」
「今はですね」
「海を見たくなりました」
そのだ。海軍の海をだというのだ。
「また機会があれば海に行きたいですね」
「そうですね。確かに」
「山にも」
海だけでなくだ。山にもだった。
考えを及ばせてだ。そして言ったのだった。
「行きたいですね」
「何処にもですね」
「二人で」
このことは外せなかった。どうしてもだ。
そうした話をしてだった。二人はだ。
英吉利の食事を楽しんだのだった。楽しみをだ。真理は次第に思い出してきていた。
第二十二話 完
2011・8・22
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