はじまり
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「ほああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
走る走る走る…
うしろから、迫る牛から逃げる。
ただの牛じゃない。
二足で立って、剣を振り回すミノタウロスだ。
美少女との一期一会を期待してたのにミノタウロスと会うなんて!
それにミノタウロスが五層に出るのはおかしいよ!
そうして、絶望は唐突に訪れた。
「え…?」
行き止まりだ…
振り返ると、ミノタウロスがすぐそこに…
ミノタウロスが、引き絞った剣が、僕のお腹を貫いた。
「がっはぁ…!」
冒険者なら…こんな攻撃どうにかできたのかな…
やっぱり…ファルナ貰ってから来るべきだった…
ダンジョンをソロで攻略すれば…認めて貰える…ファミリアに入れて貰えるなんて…思うんじゃなかったなぁ…
死にたくないなぁ…
死にたくないなぁ…
死にたく…ない…
嫌だ…!
死にたくない!
ミノタウロスが、剣を抜いて、振り上げる。
お爺ちゃんとの思い出が…よみがえる…
走馬灯ってことかな…
だけど…
おかしい…
僕に…『こんな記憶』はなかった…
木よりおおきな【ビル】に囲まれて。
馬車よりも早い【電車】に乗って。
鳥より高く飛ぶ【飛行機】の記憶なんて…
【トラック】に牽かれる記憶なんて…
【カミサマ】に会った、記憶なんて…
ミノタウロスが、その剣を振り下ろす。
僕の口からは、僕が知らない筈の…だけど、知っている武器の名前がこぼれた。
「アリファール!」
右手に、風の長剣が生まれる。
咄嗟にそれを振り上げ、受け太刀する。
「ブモォォォ!?」
「オレ…は…僕…は…死ね…ないんだ!」
空いた、左手。
「ラヴィアス!」
そこに生まれた氷の長槍を、ミノタウロスの胸に突き刺す。
「シエロ…ザム……カファ?」
凍気が爆ぜる。
「ブ…モ…ォォ…」
ミノタウロスの胸が、腹が、頭が、手が、足が、氷に包まれる。
やがて…
バキャン!と音を発てて、粉々になった。
氷の中に、紫の魔石が輝いていた。
その魔石を取ろうとしたけど…
クラリと視界が回り、真っ暗になった。
side out
「ブ…モ…ォォ…」
ミノタウロスが砕けるのを見ていたのは、少年の他に三人。
遠征を終えたロキファミリア所属、リヴェリア・リヨス・アールヴ、ベート・ローガ。
そして…正史におけるヒロイン、アイズ・ヴァレンシュタイン。
「なんだぁ?今の?魔法か?」
「そんな場合ではない!」
リヴェリアが彼に駆け寄り、傷口に杖を向ける。
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