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FAIRY TAIL〜水の滅竜魔導士〜
永遠のメロディ
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崩れ落ちる。彼の目から零れ落ちる涙は、大切な友に向けてのものだったのかもしれない。














♪♪♪♪♪

地面に四つん這いになり苦しみ悶えるラーケイド。その傍らでピアノを弾き続けるタクトの顔色も、少しずつ青くなっていた。

「この魔法はまさか・・・“永遠のメロディ”!?」

胸の辺りを押さえているラーケイドはこの魔法を知っていた。タクトは恐れ戦く彼の顔を見て思わず笑ってしまう。

「僕はこの曲が好きなんですよ。禁術とされているこの曲がね」

好きな曲・・・それなのに彼の顔から楽しさは一切感じられない。懸命に溢れ出ようとする何かを堪えているのは、誰の目から見ても明らか。

「やめろ・・・これは術者も死んでしまう魔法の―――」
「だから今使ってるんじゃないですか」

この魔法が禁術とされたのには理由がある。この音色を聞いたものは誰であろうが関係なく意識を奪い取り、永遠の音楽の中で行き続けることになる。つまりは、この世界からの解放・・・死を意味していた。
そしてそれは、音楽にもっとも近い術者も例外ではない。

「いいのかい?この音楽が終わってしまえば私も君ももう欲を満たすことはできない!!ただ何もない世界で行き続けることになるのだよ!!」
「何もないとは聞き捨てならないな・・・」

説得に入るラーケイドの言葉に不愉快な顔を見せるタクト。彼はすでに輝きを失った瞳で哀れな強者を見下ろす。

「僕はこの美しきメロディと生き続けるんだ、永遠に」

一切迷いのないその姿に、ラーケイドは唖然とした。動くことも何もできない彼は目を閉じ、その場に崩れ落ちる。

(一夜さん・・・僕はあなたに出会えて幸せでした)

タクトの中で蘇るのは、一夜と出会ってからの日々。彼に巡り合ってから、毎日が充実していた。

(背が大きすぎて気味悪がられていた僕を天馬に誘ってくれた一夜さん・・・ヒビキさんにはヘアスタイルを教えてもらった・・・イヴさんには接客、レンさんには飲み物の作り方を教えてもらいましたね)

走馬灯が頭を過る。この時が永遠に続けばいいのにと思っていた彼も、それが今日で終わってしまうのだと心が揺れた。

(一夜さん、僕は絶対に泣きません。皆さんが幸せであり続けることを信じて、深い眠りに付きます)

震える指先。一瞬でも気が抜ければ落ちてしまいそうな、それほどに体は疲弊していた。

「サヨウナラ・・・どうか・・・生き残って・・・」

魔力でできたピアノが消え去り、地面に崩れ落ちる骸。その表情は爽やかなものだった。
音楽を愛し、音楽に愛された少年はその短い人生に幕を下し、深い眠りについた。永遠のメロディとともに。







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