呪われた玉手箱
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ではあったが釣行をあきらめて、一階にある和室で、配達された日経新聞と地元紙の山陰中央新報を読んでいた。
その時だった。
二階にある例の和室から、まるでポルターガイストのようなラップ音が、耳をつんざいた。
ふいに、私の体がぶるぶる……震え出した。妻を見ると、ラップ音が聞こえていないのか、鼻歌を歌いながら包丁で何かを切っている。
「二階にある和室から、妙な音がしたろう?」
「ううんん。何にも聞こえなかったわよ。貴方の空耳じゃないの?」
少しムッとして、声を荒げて言った。
「まぁ、とにかく俺の言った事を信じろよ!」
声に圧倒されて、妻は静かに告げた。
「ハイハイ。貴方に逆らっても何の得にもならないわね」
先程まで、キッチンで昼食の準備をしていた妻と共に、二階の和室へと慌てて上り、ダンボールから木箱を出すと、中にある手鏡が大きく振動しているらしく、まるで木箱から出たそうな意思を、私は脳内で感じた。
「お前は、この木箱を見ても何も感じないか?」
「何も感じないわ。貴方は霊感体質だから、私には何も感じられない事も分かるのだわ! 霊感が身に備わっている貴方が、私に尋ねても……私には全然答えられないわ。そうでしょう?」
「そうかも知れないなぁー。まあ、取りあえず手鏡を出してみよう」
私は、得体が分からない恐怖感に全身を包まれて、またしてもぶるぶる……と震えが止まらなかった。しかし、自分を鼓舞して勇気づけ、恐る恐る手鏡を出してみた。
すると、あんなにもくすんでいた手鏡は、まるで金の延べ棒のような黄金色にキラキラと輝き、眩しくて目を開けていられなかった。あたかも、その存在を誇示しているようだった。
長い期間、その存在を忘れていた。カタ、カタ……震えている手鏡の持ち手を強く握って、妻に尋ねた。
「まり子は、この黄金色の手鏡をどう思う? つまり、何のために存在している、と思う?」
色白のコケティッシュな顔が、ぱぁと頬に赤みがさし、歓喜にあふれた様子をしたのは、なぜだろうか? 何かいい考えが浮かんだのだろうか?
「手鏡にお願いすると、きっと、それが叶えられるのよ、神様から賜った宝物だわ! アラビアンナイトに出てくる魔法のランプみたいな……」
「まり子の説だと、願い事を実現してくれる手鏡だね。……うーん、そうかも知れないなぁ。それに賭けてみようか? でも、何を願ったら良いかなぁー?」
約半時間、二人で真剣な討議を戦わせた結果、三つの願いに集約した。
「二人で手鏡に、心を込めて三つのお願いをしてみよう!」
「賛成よ! その通りにしましょう」
「OK。じゃあ、息を合わせて願おう」
二人で、早速手鏡を見つめ心を込めて、三つのお願いを唱和してみた。
「一つ、一カ月以内に昇進出来る事。二つ、しかも阪神地区に転勤する事。三
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