293部分:第二十二話 消える希望と灯る希望その六
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第二十二話 消える希望と灯る希望その六
「ですから」
「そうですね。人は必ず死にます」
前にも話したことを思い出しながら。義正も述べた。
「では」
「はい、それでは」
「私もです」
「私と、ですね」
「共にいたいです」
こうだ。その真理に話したのである。
「そうして宜しいでしょうか」
「はい」
真理はだ。少しだけ微笑んでだ。
それでだ。こう答えたのだった。
「御願いします」
「有り難うございます。私もです」
「義正さんもですか」
「運命ですね」
義正もだベートーベンのその曲を聴きながら言ったのだ。
「それですね」
「義正さんの運命ではありますか」
「運命は一つではないのでしょう」
義正はこんなことも話した。
「互いに絡み合い影響し合うものです」
「そして運命は運命となりますか」
「そうだと思います」
義正は真理の考えからだ。そこに至ったのだ。
だからこそだ。その彼女に話したのである。
「では」
「はい、それでは」
「私も共にいます」
そうするというのである。
「そうさせてもらいます」
「有り難うございます。では」
「それでは」
二人で微笑み合いだ。それから。
そのうえで。今は。
運命を聴いた。そのベートーベンの曲をだ。
聴きながらだ。それで話すのだった。
「この曲は」
「ベートーベンの代表作と聴いていますが」
「そうです」
微笑みだ。義正は真理に話す。
「彼の代表作です」
「こうした重厚といいますか」
「低く、それでいて激しい曲ですね」
「そうです。何故こうした曲になったのか」
「それはどうしてなのですか?」
「彼は耳が悪かったのです」
後世あまりにも有名になることだ。
「聴こえなくなっていったのです」
「耳がですか」
一説には梅毒のせいだと言われている。この病もまたこの時代においても不治の病だった。あまりにも無残な最期を遂げた者も多い。
その病のせいでだ。彼の耳は駄目になったとも言われているのだ。
しかし義正もそのことは知らない。それでだ。
真理にだ。こう言うのだった。
「原因は謎ですが」
「それでも耳がですか」
「はい、最後には聴こえなくなりました」
全くだ。そうなってしまったのだ。
「音楽家だというのにです」
「それで音楽家をしていくのは」
「普通に考えてできません」
音楽は耳で聴くものだ。しかしその耳が駄目になってはだ。音楽を創り出す音楽家をできる筈がない。普通はそう考えるものだ。
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