292部分:第二十二話 消える希望と灯る希望その五
[8]前話 [2]次話
第二十二話 消える希望と灯る希望その五
「運命ですね」
「それがこの曲の名前です」
「そうですか。運命ですか」
曲の名前を再び聞きだ。そうしてだった。
少し考える顔になりだ。真理は話した。
「運命。私の運命は」
「それは」
「死です」
それはもう逃れられない。言うのはこのことだった。
そのことを思わずにはいられなかった。しかしだ。
ここでだ。真理はこうも言ったのだった。
「しかしですね」
「しかしとは」
「人は必ず死にます」
この考えをだ。ここで義正に言ったのである。
「生きているならば必ずですね」
「はい。人は」
真理のその言葉にだ。義正もだった。
あらためてだ。こう述べたのだった。
「それから逃れることはできません」
「どの様な方でも必ず」
「死にます」
義正はあえて言った。このことを。
「それはどうしようもありません」
「ではです」
「それでは」
「労咳であろうとも」
今だ。真理は吹っ切れたのだった。
その吹っ切れたものでは。言うのだった。
「人は必ず死にますから」
「だからですか」
「私は落ち込むべきではないですね」
こう言ったのである。
「何があろうとも」
「そう思われるのですか」
「思っただけです」
そうだというのだ。
「それだけです」
「ですか」
「はい。ですがそれでも」
真理は話していく。言葉を少しずつ出しながら。
「私は前を向いて進むべきですね」
「それが今思われていることですか」
「難しいです」
特にだ。今の気落ちしている彼女にとってはだ。
そうだとだ。今話したのだった。
だがそれでもだとだ。顔を少しだけあげて。
そうして。義正に話した。
「ですが。私はそれでも」
「前にですか」
「進みたいです。そして」
義正も見た。隣に座っている夫を。そのうえでの言葉だった。
「あなたと共に」
「二人で、ですね」
「これまでお話した様に」
はじめて会い紆余曲折があり結ばれて。今に至ることを思い出し。
真理はだ。今義正に話したのだった。
「私は義正さんと共にいたいです」
「私もです」
彼も同じだ。しかしだ。
それができなくなったこともわかっているからだ。彼も気持ちを沈ませていた。
だがだった。それでもだった。
真理はだ。言ったのだった。
「ですから。この命が終わるまで、です」
「私と共に」
「いたいです。そう思います」
「そしてそれが」
「私の運命です」
それでもあるというのだ。その運命を聴きながらの言葉だった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ