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新訳紅桜篇
12 演技力は天性の才能。
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 その夜ーーー


 橋の近くでスタンバっていた私は、やっとチャンスをつかんだ。


_「ちょいと失礼、桂小太郎殿とお見受けする。」


 この声は…!

_「人違いだ。」


 …間違いない、前者が似蔵先輩、後者はヅラだ。


_「心配要らんよ、オレは幕府の犬でも何でもない。」

_「犬は犬でも、血に飢えた狂犬、と言ったところか。
  近頃巷で辻斬りが横行しているというとは聞いていたが、噛みつく相手は選んだ方がいい。」

_「フン、生憎オレも相棒もアンタのような強者の血を欲していてねぇ。
  ひとつやり合ってくれんかね?」

_「貴様…その刀……!」



 その「刀」…!?


_「アララ、こんなもんかい…」



 ヅラが倒れる。
 助けなきゃ、と思うも、似蔵から放たれる殺気のせいで、動けない。


 ここは、平然を装って、似蔵のあとを付けるしかない。


 似蔵(かれ)のあとをつけること15分、
 ようやく私は、殺気の失せた彼に声をかけた。

_「似蔵先輩ィ。アンナです。」


 すると似蔵(かれ)はゆっくりとこちらに振り返った。


_「あァ、アンナさん。やっと来たねぇ〜。
  今か今か、と待っていたよ。」

_「…そうですか。とりあえず宿へ向かいましょう。」

_「そうだな。」

_「という訳なので、その姿だとバレるんで、こっちに着替えてください。」


 と言って、地味な色の着物に着替えてもらい、一応彼に断ってから、仮面をつける。


_「よし、うまくできました。
  では、行きましょう。」



 30分くらい歩くと、予約しておいた宿屋に着いた。


_「もうすぐ着きますよ、
  正体がバレないように私がうまくサポートするので、先輩もうまく演じてくださいね。

  とりあえず、年齢的に父親と娘、という設定にしておきましょう。」

_「随分と、手際がよいのですねぇ〜。」

_「でしょう?だって私の本職は、スパイですから。
  このくらい、朝飯前ですよ。
  では、入りますよ。」


 タイミングを見計らって、宿屋に入る。
 宿に入ると、フロントの男性が、私(達)に声をかける。

_「こんばんは、いらっしゃいませ。」

_「今晩の宿を予約していた、久坂 という者ですが…。」

_「ええ。承知しております。久坂様ですね。よろしければお荷物をお持ちいたします。
  お部屋は桔梗となっております。

  明日の朝食は、いかがなさいますか?」


 エレベーターに案内される。
 先輩をサポートして、エレベーターに乗り込む。


_「お父さん、どうします?
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