第3章 儚想のエレジー 2024/10
離れた場所にて:きっかけ
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とのないというだけではグリセルダでも思い当たるものがない。というより、二人関係についても漠然としたニュアンスでしか認識していないというのが現状なのだから、長考するだけ無駄なのだが。
とはいえ、ヒヨリ当人は関係の改善を望んでいるというのは確かなようだと、グリセルダは安心する。擦れ違いか行き違いかは判然としないが、このまま相互に距離が遠ざかってしまうような人間関係の終焉は、そもグリセルダ自身が嫌うものに相違ない。かつて、自分と旦那が辿った轍を踏ませたくないという思いも決してなくはないが、何よりも年の離れた恩人の為に一肌脱ぐのも吝かではないと年長者故のお節介も多分に含まれてのことであった。
「………燐ちゃんが、分からないの」
情報を脳内で整理するグリセルダの脇でポツリと、ヒヨリが言葉を零した。
不安そうな細い声で、ぼやけた言葉ではあったが、グリセルダは何も追求せずに耳を傾ける。
「………ずっと一緒だったのに、なんだか遠くにいるみたいで………いつも、自分だけで頑張ってて………」
まとまりのない発言を聞いているうちに、グリセルダはいつかクーネから聞いた話を思い出していた。ある日のふとした場面の中で、どういう話題転換だったか二人でヒヨリのことが話題に上がった時のことだった。クーネは確かに言っていたのだ。《SAO開始当初、ヒヨリはスレイドにくっ付いて行動していた》のだと。その仲の良さや、スレイドの気苦労が忍ばれる笑い話や、デスゲームの只中だというのにヒヨリの楽しそうな姿について伝聞として窺っていたのである。
そして、それらの光景はどれもがグリセルダの見たことのないものであった。グリセルダが片翼の戦乙女に加入して暫くは部屋に引き籠っていたこともあって、ヒヨリと出会うまではギルド加入から五ヵ月ほどのタイムラグがあることを差し引いても、二人が連れ添う光景が途絶えたのは少なく見積もっても半年。それ以前にグリセルダが思い当たるスレイド側の変調の原因は、やはり昨年の十一月の惨劇に他ならない。それを原因に自殺を図るほど彼は追い詰められていたのだ。彼の生真面目さや生来の善人さを考慮すれば、無邪気な幼馴染に全てを打ち明けるわけがないと想像に難くない。仮にその一端を告白したにしても、彼は全てを話さないだろう。遠くにいるみたいだとヒヨリが感じ取るのも無理はない。
だが、同時に安易に踏み込んで良いようにも思えない。いや、或いは引き込むべきではないという方が適切だろうか。自分の窮地を救うためにスレイドは手を汚した。彼の心に癒えない傷を残し――――もしかしたら、怪物に変貌させてしまった可能性さえある。その咎はグリセルダや、酷な話だが自ずから剣を振るったスレイドに帰せられるべき罪であり、本来はヒヨリが僅かでも接して良いものではな
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