13話→兎と悪党
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暗になった。
ちーちゃんが月からタローちゃんを連れて帰って来てくれてから、私は初めて父にすがり、太郎を病院に連れていってもらい、その後、片時も離れずに彼の介護をし続けた。
タローの両親にも謝った。多分、自発的に大人に謝ったのは、その時が初めてだと思う。
一日後、彼が目覚めた。
あらかじめ決めてあった通り、私とちーちゃんが説明した事故原因をなぞり、うちの親と太郎の親、両方に当たり障りのない対応をする彼に、私は初めて何を言えば良いのか分からず、まごついていた。
ただ、タローちゃんの目を見れず、ずっと伏せていた。
耳だけ、彼と大人達の話を拾う。
気づけば、太郎ちゃんの両親や私の親は帰り、一夏君が家で待っているちーちゃんも帰って、居るのは私とタローちゃんだけ。
カチカチという壁時計の音が、ひどく響いた。
「……束」
その声に、無意識にビクッとなる。
だが、タローちゃんの話を聞かない訳にはいかない。
近寄ると、努めて明るく振る舞う。
「た、束さんに何かご用かな〜、今回は迷惑かけたから何でも聞いちゃうよ〜」
何時もと違い、恐怖から震える声。
嫌われたらどうしよう。
拒絶されたらどうしよう。
そう怖がる私に彼が送った言葉は。
「すまなかったな。俺のミスだ」
「違うよ!」
その言葉に、まとまらない思考で口だけが答えていく。
「タローちゃんは悪くない!悪いのは、月面の変化を予想できなかった……」
その先は言えなかった。
彼が、私の唇を唇で塞いでしまったから。
また私達の間に流れる沈黙。
でも、この沈黙は、先ほどとは違って……
塞いでいた口を、彼がゆっくり放す。
呆然と立ちすくむ私を、ベットから乗り出した上半身でホールドする。
抱き締めあった体から伝わる彼の温もりが、嬉しかった。
しばらくすると、彼は抱き締めた私の耳元で、一言だけ囁いた。
「気にすんな、好きでやってる」
よし。
ポイッ
無駄に高性能なシェルター型アイテムを投げ、病室を外界から孤立させる。
私は彼を病室で襲う事に決めた。
私にとって、彼が唯一の異性となったのはこの時だったな……
妙に手慣れてた事にはムカついたが、まあいい。
あの日から今まで、私以上に彼と夜明けのコーヒーを飲んだ人は居ないのだから。
おや、夢が覚めてしまった。
久しぶりの居眠りに苦笑しながら、私の頭は夢から現実に戻った。
顔に置いて、視角を塞いでいる本を弾き、適当に床に落とす。
「ふんふ〜ん、さてダーリンタローちゃんは何を選ぶかな〜」
女にだらしなく、性格も曲がっているくせに、一度情を掛けた人間には甘
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