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提督はただ一度唱和する
タイタニア
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殿も、我々の撤退を待っておられる」
『新城!!』
 だが、それは覚悟をないがしろにされた若菜も同じであった。憎悪すら感じる声が、無線から割れ響く。
『放っておけ。腰抜けはいらん。我々は出るぞ。貴様はそこで居竦んでいるがいい』
 無線に新たな声が乗った。確認のために鳳翔を見れば、愕然とした顔で首を振る。
「那智です。そんな、どうして」
 つまり、向こうの独断専行ということだ。若菜は煽られたのか、それとも利用されたのか。ともかく、やはり、寄せ集めに過ぎないということだ。人のことをとやかく言うべき状況ではないが。
 通信は切られた。威勢の良いことを言っていたが、どうせ海岸に向かうならば新城の近くを通るのだ。というよりも、猫のほとんどがこちらにいる。本当に突撃するつもりなら取りに来るだろう。焦ることはない。焦るべきではあったが。
 新城は今まで一度も腰を落とすことのなかった椅子に、深く沈み込んだ。那智の捨て台詞のせいか、艦娘も大人しい。漣の繋いだ無線からは、今も懸命に龍驤が情報を流している。
『こない急に海が大人しい。上空の雲は厚いままや。よほど、力を持った姫や。とくに、海面状況の改善が著しい』
『更に戦艦を確認。護衛は軽巡、駆逐が二。なんや? ワ級、輸送艦がおるで?』
 淡々とした声。落ち着いた口調。砲声と激しい水音が背後にあっても、よく通るように抑制されている。
「龍驤殿に通信は?」
「こっちからは届きません。鎮守府の設備なら可能ですが、艦娘の艤装だけでは。龍驤さんは多分、航空機を複数中継して、深海棲艦の妨害を突破しているはずです」
「それをこちらが利用することは?」
「無理です。妨害の外に向けてならともかく」
 漣が悲痛な表情で俯く。なるほど、優秀だ。初期艦に選ばれるだけはある。
『あー、こりゃヤバい。ヤバすぎや。姫発見。あれ、陸上型やない? うちより小さいが、何ぞ見覚えがあんで』
 能天気とも思える彼女の報告は、途轍もなく貴重だ。重要であるだけではない。それが今後の犠牲を減らす助けになる。彼女の命を代償にもたらされている。
『聞こえとるかー? 容姿は飛行場姫に似とる。何や知らんが来るな、言われた。来とんのはお前やっちゅうねん。カエレ!!』
 深海棲艦のものらしい悲鳴が聞こえた。初めて耳にした新城は、全身が逆立つような感覚を覚える。化け物のような声ではなかった。完全に人間の、若い女性の断末魔だった。
 そして、戦闘音。その間も龍驤はぼやく。
『指揮自体は、護衛のリ級がやっとるな。大したもんや、包囲が早い。特徴は、ない、な。気持ち、背が高いか? 隣の姫が小さいせいかわからんが』
『まだ、聞こえとるかな。叢雲もあれや。強気なふりして、気負いすぎや。戦争からそう簡単に足抜け出来るわけないやん。向こうさんの事情もある。それ
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