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提督はただ一度唱和する
タイタニア
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そして、北海道が危機に陥り、日本海の安全も疑わしい状況で、充分な縦深のある太平洋での迎撃のために、遙か離れた海域で戦闘に興じている。
 先ずは、国防体制を盤石とするべきだった。アリューシャンからの侵攻が判明した時点で、方針を転換すべきだった。少なくとも、これまでと違う深海棲艦の動きに警戒して戦況を膠着させるぐらいなら、増援を送るべきだった。日本国内に深海棲艦の根拠地を作られるか否かの瀬戸際なのだから、当然下すべき判断だった。
 この状況で動かない徴兵提督には、今後厳しい処分が下るだろう。責任を押しつけるべき上層部は、既に消費された。その煽りを受けて、横須賀への対応も強硬にならざるを得ない。ここで公平性を欠いては、統制を取り戻せないからだ。
 それを救う。新城はその為にここに来た。美幌への到着が妨害され、横須賀と接触する前に作戦が始まり、どうなることかと思ったが、間に合った。
 はずであった。
「沖合いの龍驤さんから連絡です!! 敵本隊と思しき大部隊と接触!!」
 困り果てた漣の説明に混乱を深める瑞鶴を眺めて、頭の痛い思いをしている時だった。まともに説明して、新城や陸軍の手柄には出来ない。横須賀や海軍が独断したから現状があるのではなく、あくまで上層部の作戦指導が拙かったために起きた悲劇であり、独断そのものは仕方ない範囲であったように見せかける必要がある。現状の歪みは、海軍の手で正されねばならない。
「どういうことだ?」
 これ以上、敗北を重ねる前に。
「一般無線に繋ぎます」
 艦娘の全てが、呆然としていた。漣だけが、苦しそうに告げた。
『あ、あー。聞こえますか? ただ今敵本隊と接触中。これより、後退戦闘に入ります。情報は逐次流していくさかい、みんな聞いていってね』
『呑気なこと言ってないで撤退しなさい! 一時間、一時間で釧路沖から、援護が来るわ』
『そうやね、一時間ありゃ上陸出来る位置やね、敵さんが』
『うちらの再戦力化まで、最低一時間や。その間、大湊の方で支えてもらわなあかんが?』
『・・・・・・敵の空母はどの程度です?』
『いっぱい』
『・・・・・・陸軍の援護で手一杯になるかと』
『そのまま、宗谷を回って日本海まで出ればいいわ。釧路から航空隊が来れば、大湊も援護できるでしょう? 陸軍だって、』
『叢雲、うるさい』
 何やら愁嘆場が繰り広げられているようだが、新城は海図に覆い被さり、コンパスと定規を手にする。無線から流れて来る情報を頼りにそれを動かし、おおよその位置と敵情を記入する。
 戦艦三十二、空母十六、重巡三十六、軽巡二十四。駆逐艦は無数であり、数はおおよそのものだ。指揮官である姫の姿は確認出来ていない。やる気充分というのは、一種の隠語で、鬼火を纏う強力な艦の存在を示している。天候は回復に向かいつつあり、波は穏
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