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提督はただ一度唱和する
空母の矜持
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動兆候が確認された地点が、大まかに示されていた。打って変わって、大雑把に移動方向だけを記し、深海棲艦の種類をまとめて隅に置いている。その意図を図りかね、三人が揃って首を傾げる。
 紳士的にたった一つの石油ストーブを他の艦娘に譲ったはずの兵士たちは、その光景を眺めて酷く暖かそうで、話に加わる気のない艦娘たちは寒々しい。
 瑞鶴が唸り、鳳翔が頬に手を当て、漣が日本版コロンボの真似をして、新城がちらりと振り返り、兵士たちは冷凍された。
「で、何なの? これ」
「貴女方、ああ、海軍は深海棲艦をどのように評価しておられるので?」
 無視である。問いは鳳翔に投げられた。瑞鶴が拳を構えるが、ここにいるのは深海棲艦を殴り殺すために訓練された陸軍兵士である。むしろ、新城の方に胡乱な視線が集まった。艦娘は、慌てる漣に連動する顔文字兎に、夢中である。
 鳳翔はこの状況で微動だにしない新城の面の皮を、心からつねってやりたいと思った。表向きには極めて友好的に、笑顔で回答する。
「含意が広すぎてお答えしかねますわ」
「奴らを軍として認識しているのですか?」
 新城の言葉の意味が分からなかった者は、艦娘であっても彼を尊敬した。漣は理解はしても、現状と結びつけられなかった。鳳翔は理解して、地図を見て、浮かんだ事実を疑い、しかし、信じられずに冷めた目をした。瑞鶴は混乱している。
「正体不明の艦艇型生物群と認識しておりますが・・・・・・。原始的な社会性と文明の存在も確認されています」
「貴女方と同じく、成長や進化と呼ぶべき兆候が、戦略次元に達したと評価しているのですか?」
「そこまでは・・・・・・。しかし、今後、そのような認識に至る可能性はあります」
「では、貴女方は? 総体として、戦略的知見を獲得したと言えますか?」
 艦娘たちの表情が強張る。それは、彼女らと深海棲艦を同列に扱う言葉だったからだ。
「自覚して頂きたい。良きにつけ悪しきにつけ、貴女方を比較対象とせざるを得ないのだ」
 理解は出来る。だが、納得することとは別だ。退屈そうにしていた艦娘たちが、新城に並ならぬ興味を示し始めた。
「人間の皆さんも、全てが貴方のように考えられるわけではないと思いますが?」
「我々は極めて政治的な動物です。とても参考にはならない」
 言葉だけは丁寧だが、明らかな苛立ちと、こちらを叱責する態度である。難しい人物だとは感じていたが、極めつけにそうであるらしい。
 そして、出来うる限り感情を廃し、深海棲艦の立場と自分たちを置き換えて見る。
 絶望した。
 どれだけ低く見積もっても、現状の数百倍に及ぶ正規空母を養わねばならない自分を発見してしまったのだ。
「食糧確保が最優先です」
「え? どういうこと?」
「「「自覚して」」頂きたい」
 戦争などやっている場合で
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