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提督はただ一度唱和する
空母の矜持
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という本末転倒な状況が発生した。
 当然のことではあるが、消耗した彼女らが何をしたところで、自殺でしかない。それでも、第五提督室所属龍驤が残ったのは、ただ一つの目的を果たすためである。
 すなわち深海棲艦空母群の捕捉。
 釧路沖に大湊の空母たちが存在しているのだ。網走沖であれば、充分攻撃圏内である。もし、居場所を突き止めることが出来れば、数の差を補って優位に戦えるはずである。陸軍の天敵である空母群を始末できれば、今後の見通しも立つ。
 ただし、釧路は未だ完全に制圧出来てはいない。千島を占領している戦力の動向も、横須賀の水雷戦隊が補給中の現在は、調べる術がない。
 それでも、もはやそれに賭けるしかないのだ。

 
                    §


 本来であったならば、指揮官である若菜の側に控えるべきであったかも知れない。しかし、いつの間にやら漣の身柄を確保している凶相の次席指揮官を放置出来なかった。
 愛宕が出撃し、瑞鶴が敵意を隠さず、向こうも艦娘に対して嫌悪の情を抱いているとなれば、速やかな連携のためにも、この男に頼る他ない。
 いささか不安ではあったが、武人としての矜持を残す那智を対空防護の要とし、航空戦力は仮の司令部から離して運用することとした。
 艦娘と陸軍の司令部が分かたれたことになるが、分散配置は深海棲艦との陸上戦における原則でもある。反対はなかった。
 問題は地図を広げ、漣にこの戦役の推移を解説させている新城である。今さら何をと思ったが、新城は目線すら寄越さず告げる。
「我々は敵情を何ら把握しておりません」
 言葉の意味以上に、反論を許さぬ態度であった。瑞鶴が反発を強めるのではないかと危惧したが、流石は五航戦の素直じゃない方と言うべきか。萎縮する漣を庇うように、いつの間にやら解説の役を代わっている。
 今は指揮官として振る舞わねばならないというのに、気がつけば温かい白湯を用意したりと甲斐甲斐しく働いていた鳳翔は、強縮する兵たちに笑顔を振りまいた。和やかな空気が寒さを湛えた部屋に漂う。
 新城を除いて。
「では、深海棲艦が敷いた哨戒網であると判断した根拠は?」
「はあ? 潜水艦よ? 他にどう判断しようがあんのよ」
「消去法? いや、実際、ワケワカ・・・・・・じゃなくて、まあ、あそこは常に荒れててアレですしおすし?」
 卓の上には、簡単な世界地図と北方の海図が用意されていた。白湯を置きながら鳳翔がそれを覗き込み、釣られて漣と瑞鶴もそれを見る。
 海図には深海棲艦が敷いたと覚しき、哨戒網の範囲が書かれている。出現地点、艦種、天候、日付と時間などを事細かに記した文字は、有り体に言って新城の見た目を裏切る丁寧さだ。三人はそろそろと首を傾げながら、もう一方に視線を移す。
 世界地図には戦力の移
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