空母の矜持
[5/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
き締めが図られ、それが今日の敗北に繋がっている。
深海棲艦のある限り、艦娘を運用するしか、人類に未来はない。そのため、彼女らの社会的地位は、法や国民の感情がどうであれ、否応にも高まっていった。
それほどまでに重要な彼女らは、自らを知らず、提督にのみ従う。
つまり、彼女らを社会に組み込むには、人類が全て面倒を見てやらねばならないのだ。
むしろ、反乱を起こしてでも、何か主張や要求をしてくれればやりようもあるというのに、愛と誇りと米とお膝がその全てである。しかも、与えなくとも気分を落ち込ませて戦力を落とすだけで、文句も言わない。
よって、先ずは知ることから始めるべきだったのだが、現実はそれを許さなかった。なまじ、最初が上手く行き過ぎたせいで、気がつけば二〇〇種に迫る個性がこの世に生まれていた。
狙って生み出すことが出来ない以上、その全てについて対応しなければ、ならないのかそうではないのかさえも、今まさに調べている状況で、その資料となり得る種々雑多な書類を、減らすことなど許されようか。むしろ、もっと増やしたい。
そして、行政、防衛、立法、経済の各分野で国家戦略の要となっている艦娘の運用は、提督に課せられた全ての事務手続きと報告が、正しく提出、処理されることでしか法的に認められていないのである。
これに手を入れるとなれば、戦争に匹敵する大事業だ。この混乱の最中にするべきことではないし、統合幕僚本部以外からも介入を招いて、むしろ拡大するだろう。
結局、統合幕僚本部の海軍への侵蝕こそが目的であると理解しながらも、提督たちは口を閉ざした。湧き上がる想いを、言語化し得なかったからだ。
こうして現場への影響を抑え、混乱を収拾しようという努力は実を結びつつあるが、いざ深海棲艦との決戦となれば、数で劣る艦娘は慎重に運用せねばならない。
今しばらく時間が必要なのだが、既に千島列島は制圧され、北海道にも深海棲艦が迫りつつある。かねてよりの荒天により、陸軍の展開も遅れ、オホーツクが流氷に閉ざされるのも間近だ。
少数の艦娘が旭川駐屯部隊に合流したものの、軽空母の救援すら疑問視される戦力でしかなく、残りは未だに海上を北上中である。
深海棲艦の北海道上陸阻止は絶望的であった。
海岸に橋頭堡を確保した深海棲艦は、空母の到着と同時に内陸部に向けて空爆を始める。天候のために支援も満足に受け取れず、大雪山山中で足止めされている旭川駐屯部隊は全滅の危機にある。彼らの半ば独断専行じみた行動を批判する声も上がったが、既に網走へ到達した中隊も旭川所属だ。
海軍との情報共有がなされていれば、天候に邪魔されることもなく、網走へ展開可能だったと反論されれば口を詰む他ない。
よって、救援されるべき軽空母部隊が、陸軍を救うためにまず時間を稼がねばならない
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ