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提督はただ一度唱和する
空母の矜持
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艦が戦況を覆した事実を、忘れる訳にはいかなかったからだ。
 彼女らは主力にはなり得ずとも、北海道のように、空母を中心とした百倍の深海棲艦に突撃して、一定の戦果を期待されるほどの戦巧者である。性能や機能といった絶望を超えての信頼だ。
 これが現在の主力である大型艦にも起これば、今後の戦争は安泰である。彼女らの高い生存性から、むしろ楽観された未来だった。
 しかし、今やそれを期待するには、既存の体系が悉く邪魔にしかならない。艦娘にとっての適切な関係は、人間にとって不適切であることは既に明らかだからだ。
 誰もが頭を抱えて混乱し、対立の深まる中で、これを単純に外部からの口出しを阻む根拠に仕立て上げた守原は、やはりどこかおかしい。おかげで、また全てが棚上げとなる。
 そして、守原への不安と猜疑を募らせる人々に妖精さんが囁いた。
 旦那、ぴったりな艦娘がいますぜ。
 聞こうと、返事をしたことが間違いであったかもしれない。ある三隻の艦娘が、鎮守府の補給や任務伝達の窓口として派遣される。彼女らは戦闘能力こそ失ってはいたが、鎮守府の機能を拡大させ、運営を円滑にし、戦力を増大させた。
 そして、とある改装空母が規定量を超える飲酒によって禁酒を提督より達せられた。彼女はそれについて異議を申し立てた上に、出撃拒否を含めた恫喝で、提督を脅迫した。日常的な風景である。
 当たり前だが、軍においては重大な罪であり、銃殺も考慮される案件だ。しかし、法的に兵器扱いの艦娘は、軍法会議にはかけられず、その扱いは提督に一任されている。
 艦娘はそういうものだからと受け入れつつある統合幕僚本部も、提督が彼女の言に絆されて罰則を緩めたのには飛びついた。一部の嗜好品の補給を絞り、補給手続きや艦娘の行動に関する報告などを厳格化することで、海軍を締めつける。
 本来なら、内々で処理されるはずだったこの問題に統合幕僚本部が気づけたのは、先の三隻が関わっていた。
 海軍の一時的な壊滅と、艦娘の台頭により先送りされてきた組織の再構築について、やっと必要性が理解され始めたのだ。
 対抗策として鎮守府内に居酒屋を開業し、艦娘の私生活を統括するために空母一隻を半ば引退させた守原は、流石と言うべきだろう。
 そして、件の高齢戦艦が押しすぎて引かれる様を描いた幸運艦の絵日記が、執務中の提督の膝の上で作成されたものであることも判明した。よくよく確認してみれば、幼い艦娘についでのように提出させていたそれが、鎮守府内を最も客観的に把握し得る資料であることが認められたため、絵日記の添削と解説が提督の業務に追加され、様々な制約が書類という形で課せられることになる。
 駆逐艦は提督の膝の上に席を置くことを許された。
 結果、明らかになったあまりに野放図な提督と艦娘の関係に、守原の抵抗虚しく、抜本的な引
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