空母の矜持
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、ある書類の山だった。後に金剛文書と呼ばれ、後世に同情と失笑を誘う資料である。
例えば、ほとんどの提督が重用する高齢戦艦は、前線では安定した指揮能力を発揮し、卓越した事務処理能力で後方を補佐し、その気質と人格で他の艦娘をまとめ上げ、単艦戦力としても頼りになり、運に頼まずとも比較的容易に建造できる上に、ともすれば私生活までお世話になるほど有能な艦娘だ。
しかし、前提として彼女は提督に女性としての扱いを求める。この部分について受け入れられない提督では、彼女の性能を十全に発揮できないことが明らかにされている。
それは、複数の提督の報告を比較検討して導き出した、疑いたくなるような事実であった。
初期艦があくまでも組織の立ち上げとその後の運営にのみ、力を発揮するのに対して、彼女の献身はあらゆる面で提督と艦隊を支えていた。その代償として、軍における公序良俗を諦めるまでに、政府や提督個人を含め、関係者がどれほどの努力を払ったか、想像がつくだろうか。
外見は美しい少女でも、戦艦なのだ。都市一つを焼け野原に出来る戦力が、個人に忠誠と愛を捧げるをよしとするなど、もはや近代的な軍事組織に対する明確な反逆だ。
艦娘がいれば提督など素人でいいと開き直る、守原の神経が特殊なだけである。
その特殊性に頼らざるを得ない程、状況は特殊だった。軍規や軍法が、この時点でほぼ無意味になったからだ。
改めて、艦娘についての研究が再開された。人間然とした彼女らを、人間として遇することで、如雨露にも見える艤装が十二センチ砲と同じ結果を生み出すことから目を逸らしていた人類が、目を覚ましたのだ。
過去を含めて、艦娘についてのあらゆる事柄が報告の対象となり、検証されていく。妖精さんと、腰を据えて相対する覚悟を得たのもこの頃だ。
やはり、彼女だけではなかった。
戦場では艦娘としての能力以上に頼りにされる、ある不良軽巡がいた。彼女はしばしば、面倒くさいという理由で書式を無視した報告書を上げ、報告書の差し戻しと共に、提督の事務処理を増やすのが得意だった。
また、生まれ持った性能から遠征任務に従事する割合が高いのだが、しばしば同行する人間と問題を起こしていた。
発端は人間側である場合が多いため、彼女にばかり責任を問う訳にもいかないのだが、海軍の立場では庇うどころか何かと頭を押さえつける結果になる。特に徴兵提督が一般的になってからは、そうした傾向が強かった。
気がつけば戦場の鬼とも形容された彼女は、自意識過剰な面を持つ、どこか残念で面倒見のよい駆逐艦の玩具になっていた。
意味がわからない。
経験を積めば、艦娘は性能を含めて成長するのではなかったのか。前提を覆すこの事実は、先の高齢戦艦と併せて、艦娘に対する付き合い方というものを大きく見直させた。黎明期、軽量
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