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提督はただ一度唱和する
祈る者たち
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下手に見識を与えれば、両方が現在の国情を理解して、何らかの行動を起こすことすら懸念される。そして、国情を回復させるためには、提督と艦娘の力が必要だ。
 八方塞がりだった。守原の提案が歓迎されたのも、その辺りが理由だ。それでは何の解決にもならないことは、もちろん承知の上だった。
 しかし、日本はある程度の余裕を得た。国情の回復はもちろん、軍組織の改編も可能にするだけの体制も整いつつある。ただ怯え、疑うだけだった三種の知性体に対しても、情報は集まってきている。
 必要なのは名分だけだった。誰もがわかりやすい形で問題を認識すること。それが求められていた。今回の戦役は絶好の機会だろう。
 鳳翔としては、守原の立場を守るために、何らかの成果が必要だった。自らが功を立てるのでは、これまで通りに警戒されるだけで、現状を好転させるに足らない。味方を作る必要があった。横須賀と陸軍は、貸しを押しつけるのに絶好の相手だ。
 時間は限られている。今後の予定を説明しようとする中尉を見た。
 背は低い。顔は女子供を怖がらせる類で、お世辞にも美男子とは言えない。世を拗ねたような雰囲気と、傲慢な態度。そしてあの目。温かさなど欠片もない、こちらを見下すともなく、ただ自然現象を眺めるかのような、底のない眼差し。
 まるでこちらを見透かすかのようだ。
 どこかで既視感を覚えながら、鳳翔は頭を抱えた。
 彼を見て好意を抱く女性など、いるわけがない。そして、彼女らは例外なく女なのだ。


                   §


 どのようにして、横須賀の軽空母部隊を救出するか。選択肢はそもそも少ない。追撃してくる深海棲艦の陣容すら曖昧なのだ。速度に長けた軽巡を中心とした艦隊だろうが、背後には空母も存在しているはずだ。横須賀を救援しようとすれば、そこを狙われる可能性が高い。
 横須賀とその追撃部隊は囮だろう。あちらこちらに潜伏して、夜襲や浸透突破を図る陸軍は、深海棲艦にしたところで厄介なのだ。上陸はしても、基本的に彼女らは水棲生物である。陸地を占領して安全を確保するのは困難なのだ。
 それでも陸地を目指す理由については、おそらく繁殖に必要なのだろうと推測されている。海のどこにでもいる彼女らだが、やはり島嶼部における密度は段違いだ。なんにせよ、深海に引きこもって済むような生態ではないのだろう。
 横須賀の回収地点は能取湖の奥、卯原内川河口とした。艦娘が少なく、航空戦力も劣勢であることが予想される。広域を援護することは出来ない。移動中の旭川本隊が狙われた場合に備え、艦娘は北見に潜伏する。旭川でも新城の所属していた大隊を先頭にして、防空体制を整えている。
 幸いと言ってよいのか、高速修復剤や補充の航空機は十分な数がある。深海棲艦を一時的にでも振り切ることが出来れば
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