詭道なればなり
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」
誰かが気づけば、そこは歴戦の強みか連鎖的に理解が広がる。
「単縦陣へ!! 突破と同時に左舷回頭!! 全て撃ち尽くして!!」
もはやそれは悲鳴だった。何故分からなかったのか。深海棲艦得意の物量作戦。大きく、鈍い輪形陣は囮。深海棲艦が放った艦載機は、彼女らどころか、直掩機すらも顧みず、ただ一方向に向かう。追われているのは、攻撃手段を失って帰還する艦爆の群れ。
「空母が・・・・・・逃げて。お願い」
海が開けた。突破した。取り残されたのだ。深海棲艦は、陣形を再編して千島列島へ。逃げる先は、灰の降り積もる半島か。それとも流氷で閉ざされたオホーツクか。全力で回頭。だが、これから追いかけたとして、死線を潜った事実は変わらないのに。
「上空!! 敵艦載機!!」
「読まれていた?」
一瞬の忘我。荒れる海上で、全力で舵を切っている最中の、およそ考えられる限り最高で最悪の機会。
「回避ー!!」
その命令に、誰が従える。
§
提督の不在が仇になった。あの運命の日の過ちを繰り返してしまった。
確かに戦力は絶望的なまでに足りなかった。突撃する水雷戦隊が優先されるのは当然だ。先手だからと、主導権を握ったつもりになっていた。空母を集中運用してしまった。分散するべきだったのだ。
札幌からは、直ちに先遣隊から追加戦力が派遣された。貴重なヘリを使って、全力でオホーツク沿岸に向かっている。守原大将の命令を受けた鳳翔は、きょとんと彼を見つめた後、いつもと同じ微笑みでそれを受諾した。
陸軍も急いではいる。だが、冬なのだ。限られた車両で大雪山を越えるために払われるあらゆる努力を、雪が覆い隠していく。大規模な兵員輸送は、繊細な雪山を揺り起こす。到着は遅れていた。
深海棲艦はこれまでが嘘のように分散し、千島に展開していた軽空母部隊を追い詰めている。流石の巧みさで遅滞戦闘を試みているが、艦載機は無限ではない。幸いなのは、空母であるが故に、それなりに速度を稼げることか。
追撃する横須賀の残存艦隊も必死に追っているが、何とか先回りを狙う一部の分遣隊を始末したのみだ。解き放たれた獣のように戦果を挙げる彼女たちだが、それも限界だ。旗艦叢雲は現実を見つめて頽れた。
深海棲艦を閉じ込めるはずだった流氷は、千島列島を確保されたことでその意味を反転させた。オーストラリア打通を諦めさせたソロモン海が、国内に出現する可能性が指摘されたのだ。
もはや、太平洋や南方の決着を待つことも出来ない。ことここに至っては日本海からも戦力が抽出されるだろうが、戦力の逐次投入が避けられない状況とは、つまり破綻しているのだ。
現有戦力で事態を打開せねばならないとなれば、空母は一人でも貴重である。
しかし、摩耗し
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