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提督はただ一度唱和する
伸ばした手の掴む先
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抱えとるんちゃうか? おそらく、空母系の姫やな。外縁を軽巡で固めて、砲艦がその後ろ。駆逐と空母は中心辺り。遊撃らしきもんらが周辺におるが、今のところ相手にされとらんわ。あと、員数外と覚しきイ級いっぱい」
「足は?」
「半分半分やな。まあ、いつものように出来たら、逃げ散るやろ。出来たらな」
「龍田、周辺の水雷戦隊は?」
「三〇ほどかな〜? でも、幼稚園が来てるって〜」
「その通称辞めて下さい」
 艦娘というのは、通常知られているよりもそれなりに個体差がある。見た目はもちろんのこと、性格や能力にも違いが見られるのだ。そのため、固有の通り名を冠した艦娘や、任務部隊も存在する。これは、深海棲艦側でも確認されている事実だ。
 但し、厳密な性能というのは変わらない。本質というべき部分も、似通っていることが多い。少なくとも、夜戦バカが夜中大人しい艦隊はない。
 結局のところ、提督の運用と練度次第ということだ。
「じゃあ、連絡しといて。こっちも横須賀に繋いでおくわ。二、三日あれば、一当てするぐらい集まるでしょう」
「いいの? それ?」
 陽炎が疑念を溢す。北海道の防衛を指揮する守原大将はもちろん、指揮系統の上位を悉く無視しているのだから当然だ。
「増援じゃなくて、支援なのよ、私たち。担当はそもそも太平洋なんだから、文句を言われる筋合いはないわ」
「いや、だからて」
「うちの莫迦は小笠原だし、横須賀の司令長官さんなんて、舞鶴の後始末を請け負った直後にこれでしょ? 指示を待ってたら、あいつら上陸しちゃうじゃない。それとも、大和型にでも頼る?」
「「「「それはない」」」」
 論理のすり替えだろう。適材適所という言葉もある。いや、どちらも連合艦隊旗艦を務めた来歴はあるのだが。
 断っておくが、控えの席を温めることの多い大和型が、ここぞという時に頼りになる戦力であることは間違いではない。しかしながら、年の功とも言うべき何かが艦娘の能力に影響を与えている可能性が多少なり認められていることは、海軍の最重要機密として一般的に流布している事実である。
 もちろん、一要素として参考にする程度のものだ。やはり、提督次第と結論する他ない。
 おしゃべりを適当に中断して、横須賀を呼び出す叢雲は思う。
 提督次第という言葉の、あまりの呪わしさに。
 文字通り、生き死にでさえも自由にされてしまう自分の運命に。
 兵器であり、人間であり、付け加えれば女であるという、曖昧な属性に。
 それでも、ただ受け入れることだけは出来ない。どうしようもないと諦めて、蹲ることも、流されることも、信じることさえも。
 だが、それに抗う艦娘は貴く、神聖で、何よりも醜悪だった。決して、正視出来るものではない。彼女には、足の踏み出す先を決める勇気などなかった。
 時代が変わろうと
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