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提督はただ一度唱和する
花弁に閉ざされて
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そして、今もそうだが、対峙しているこちらが耐え難くなるほどの、何か鋼のような硬いものに裏付けされた、冷酷さと傲慢さに溢れた態度。それは、現実というものが形を持って立ち塞がるような、圧倒的な正しさを若菜に示していた。受け入れることも、目をそらすことも出来ない。抗うにしても、どこか惨めな自分を自覚せざるを得ない。理不尽だった。
「艦娘のこともそうだ。あんな欠陥兵器に訓練を施したところでなんになる。何を考えているんだ」
「特段、何も。既にご説明した通りです」
 莫迦にしているのかと思う。自分の無能を責められているようだ。若菜にしても、新城の方が指揮官として適任だという自覚はあるのだ。それについて大隊でどのように思われているのかも。
「それに、通信が可能になる利点は無視出来ません」
「追従出来ないではないか」
 そこは工夫でとはいかない。最大の武器である機動力は封じられる上に、駐在艦では通信能力も貧弱だ。また、艤装を展開せねばならない都合上、資材も消費するし、敵の電探に補足される危険も増す。利点の割に、欠点が目につくのだ。なくても戦えたものを、不便な思いをしてまで導入しようというのは、よほどの物好きだろう。
「それについては、申し訳ありません。是正は出来ませんでした」
 嫌味だろうか。嫌味に違いない。欠点を指摘しておきながら、その克服について疑問を投げかけたのだ。若菜とて、士官になるだけの能力はある。新城の示すものが何なのか、理解するだけの頭脳はあった。新城が決して無自覚ではないことも。
 わかっている。今ここにいる艦娘は、陸軍の観測所に付帯する小集落に駐在していた。一部、利尻にいた艦娘もいるが、あそこは金持ちのための昆布養殖場だ。他の艦娘のように、漁船の護衛をすることもなく、練度など工廠から出てきたときと何も変わらないのだと。
 あれらはこの国に捨てられた、哀れな人形だ。それでも何かに奉仕することを夢見て、健気に、純粋に、日々訓練に励んでいるのだと。
 そんなことはわかっているのだ。
 それでも、若菜は艦娘という存在を認められない。若菜は提督に志願して、適性で弾かれた過去があった。幸いなことに、若菜にはコネがあった。陸軍に入り、大尉という地位も得た。新城と若菜の年齢と階級の逆転も、ここに原因がある。新城へ引け目を感じることもある。
 しかし、彼とて努力はしてきたのだ。周囲の評価に腐らず、真面目に責務を果たしてきた自負もある。それは、体験した人間にしか理解出来ない、身を引き裂かれるような苦行だった。あんな、兵器として不足で、兵として未熟、人として幼い艦娘に、否定されるような、認められないような、そんな人間では絶対にないはずだ。
 それなのに、彼女らは目の前の男に救われ、自分はこうしてのたうち回っている。不公平だと喚き散らせれば、どれだけ楽
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