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提督はただ一度唱和する
望まぬが故の歓迎
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間を無駄にし過ぎています。間に合わない可能性も否定出来ません。状況を把握するためにも、外部から情報を得なければ」
 言いなりになりたくなければ、反論する材料がなければならない。しかしそれは、上陸して奪われた、深海棲艦の支配地域へ進出することを意味する。むっつりと沈黙する将校たち。大隊長はさらりと言った。
「若菜。お前行け」
「は? 自分が、でありますか?」
「艦娘の面倒を見とるのは、お前んとこの中隊だろう? 駆逐艦連れて、ちょっと行ってこい」
 パシリではないのだが。若菜大尉は初めて真実に気がついたような顔になっている。慌てて新城を睨みつけた。積極的に押しつけていた過去は、忘却の彼方らしい。新城は無視した。それより大隊長だ。覚悟はしていたことである。
「吹雪を連れて行きましょう。幸い、資材も多少は確保してあります」
「貴様、勝手に」
「自分が、というより、妖精さんが、ですが」
 新城が機先を制すると、あーという顔で、全員が流した。この時ばかりは、新城も仲間だ。褒めて欲しいとばかりに差し出されたときは、そのまま爆破したいとすら思った。
「報告が遅れて申し訳ありません。若菜大尉殿。よろしいですか?」
 若菜は要領の得ない様子で頷いた。愚鈍にも思えるが、誰も責めない。貧乏籤を引き受けてくれたのだ。人間として、礼節を知る見事な態度だった。大隊長に目を向ける。
「んじゃ、そういうことだ。それぞれ準備にかかれ。解散」
 大隊長が立ち上がって、あくびした。他の人間も片づけをはじめる。若菜が周囲を見て、困惑のあまり慌てているが、みんなそそくさと退出していった。新城にも仕事がある。まずは猪口に声をかけねばならない。居場所の見当をつけながら、新城は廊下に出た。西田が寄って来ている。
 肩の辺りから笑い声がする。


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