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提督はただ一度唱和する
望まぬが故の歓迎
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力を獲得する。
 彼の呼びかけと説得によって、とりあえず騒動は収まった。戦力も、防衛だけならばという程度には確保出来た。代わりに陸軍は、北海道での指揮権を奪われることになる。
 これらの事情を、新城は義兄からの手紙で知った。最前線の一個人に、検閲も通さず届けられた、剣呑な郵便物だ。新城の実家である駒城がいかに権力者とはいえ、かなりの無茶である。大隊に伝えられる情報では、援軍が用意されているとしか明かされていないのだ。
 駒城は陸軍と縁の深い家であるが、何らかの形で、守原の行動を掣肘したいのだろう。海軍の統制を取り戻そうというのに、彼の行動はあまりに自家だけを優先し過ぎている。
 もっとも、義兄に関しては、ただ義弟を案じただけという可能性も否定できない。そこを義父に利用されたのだろう。新城なら動くと、確信しているのだ。
 内容も手段もきな臭いことこの上ないのだが、どこか面映ゆいような気持ちで、新城は裏側を推測する。同時に、厄介なと恨む気持ちもある。一介の中尉の身で背負うには、少しばかり重い期待だ。
 新城はこの手紙を大隊長に開示。大隊長は盛大に顔をしかめると、忌々しそうな表情で各方面への連絡と、大隊将校の召集を命じた。
 戦車乗りだった頃はそこそこ有能な士官だったのではないかな。新城は大隊長の不機嫌な横顔を眺めて思う。すぐさま命じられた行動に移った。
 集まった将校たちは、状況を知らされると同じく苦い表情になって新城を睨みつけた。厄介事を持ち込んだ人間を責める目をしている。新城も否定できない。予想されたことなので、小憎らしいほど平然と振る舞った。
「で、どうする? 提督としては知らんが、あの守原だ」
 野心家として知られる人物だ。親艦娘派と謳ってはいるが、要は艦娘を利用して、権力を握ろうと画策しているだけである。摩耶のような存在が士官待遇というだけで、陸軍は苦労しているのだ。彼に好意を抱くのは難しい。
 その上、北海道でもやらかしている。陸軍側が情報を秘匿していたなどと騒いで、何故か認められているが、常識を尋ねる人間も教える人間も希になったと、現代の風潮を嘆くばかりである。あれのせいで、北海道の兵力はかなり目減りした。
 今まで恨みがましくしていた将校たちが、一斉に新城を見る。貴様らも大概だと思いながら、新城はふてぶてしく言った。
「こちらで握っている艦娘を手放さないことでしょう。戦力がどうこうの前に、通信手段を失います」
 いかにも守原大将が要求してきそうなことだ。全員が嫌な顔をした。大隊長が吐き出した煙で、部屋が真っ白になったように感じる。艦娘にどれだけ思うことがあろうと、一度手に入れたものを再び手放すのは、抵抗があるのだろう。
「それから、海上の艦隊とも連絡を確保するべきです。いつ、守原大将が到着するのかはわかりませんが、時
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