望まぬが故の歓迎
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の侵攻があった場合には、海上での防衛は絶望的と見られる。幸いなことに、北海道からの民間人脱出は完了している。これらの事情は、ここでやっと陸軍側に持ち込まれた。
陸軍も状況自体は把握していた。しかし、日本海側に重点を置かざる得ないのは変わらない。長大な日本海の海岸線に戦力を配置せねばならず、むしろ海軍よりも面倒は多い。それだけでなく、安定が破られた反動は、全国に無視できない動揺をもたらしている。北海道に送ることの出来る兵力は僅かだ。海軍と協同しようにも、頼りの横須賀戦力は水雷戦隊であり、陸上での運用は微妙という他ない。
ここに来て最後に残るのは、臨時徴兵によって集められた提督のみなのだが、こちらにも問題が持ち上がった。
アリューシャン方面の作戦に参加した者たちを中心に、出撃拒否と判断する他ないような要求を、多数の提督が突きつけてきたのだ。
寝耳に水にも程があるのだが、背景にはこれまで醸成されてきた上層部への不信感が大きく影響している。最低でも二十人もの年頃の少女の面倒を強制的に突然、丸投げされたのだ。おまけに支援も満足に与えられないとなれば、当たり前の感情ではあった。その分、好き勝手やってはいたのだが、連合艦隊を組んでの大規模作戦への召集など、彼らの指揮権に干渉が始まった。おまけに敗北して、北海道は深海棲艦の餌だ。
彼らの危機意識は高まっている。艦娘が、思うほどに頼りにならない現実も理解し始めているのだ。
実際に、彼らの引き締めを画策しているのは事実である。過剰ではあっても、予想された反発ではあった。最悪の機会と内容であることを除けばだが。
機会については、感情以外でなら納得出来る。しかし、交渉の要であるその中味について、政府も軍も、理解という過程で躓いた。
資材や自身の待遇に関することなら、まだいい。状況を弁えろと空手形も出せる。だが、艦娘の週休二日制の実施や国民への認定など、まずどう受け取ってよいものか迷う案件も同時に訴えている。もう遠征しかしないだの、もっと直接的に艦娘の戦争参加に反対を主張するなど、銃殺すべき要求さえ躊躇いもなく口にする提督もいた。
微妙な問題を含む、膨大で迂遠な政治的手続きを必要とする前者の要求には言葉を濁すしかないが、何を思ってか彼らは本気で、強硬だ。後者に至っては、反乱さえ危惧される。
この騒動を奇貨として、守原英康大将が動いた。彼は親艦娘派の中心人物であり、艦種に則った階級制や艦娘の軍内部における人権の確立など、様々な取り組みと実績がある。また、最初に“小料理 鳳翔”の開店を認めたことでも名を知られていた。
中途からではあるが、歴戦の提督にも数えられ、北海道でともに負けた同志でもある。政府にも顔が効く。
彼は、烏合の衆の前に、おあつらえ向きに現れたヒーローだった。一気に収斂し、求心
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