侍娘-クリスティナ-part3/クリスの師
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るものなどはいて捨てるほどいるというのに。名乗りもせずに立ち去ろうとするそのさまは国王をはじめとした面々に衝撃を走らせた。中でも、彼に救われたクリスには印象深く、彼女は立ち去ろうとする影竜を引き止め、なぜそのように振舞えるのかを尋ねた。
「私たち、本当に王族なんですよ?だから、お城まで来てくれたらいっぱいご褒美を上げますよ?」
「拙者は物の怪を倒すために生涯を捧げると誓った身。他者からの恩義欲しさに刀を持っているわけではないのでござる。それが拙者の武士道なのだ」
見返りを求めず、ただ人のために刀を振るう。クリスは影竜の武士道を貫く姿勢に強い興味を抱き、彼を何とか城に招きたい、弟子にしてほしい、しばらくの間でかまわないから国にいてほしいと頼み込んだ。
当初はそれさえも断った影竜。できれば影竜は、自分の歩む道をクリスのような若い娘に教えたくなかった。だが、クリスが諦めずに誠心誠意を持って弟子になることを求めてきたので、ついに折れてオクセンシェルナの城へと招かれることになった。
「それ以後の数年ほど、師匠は私に武士道の何たるかを、剣術の手ほどきを教え込んだ。私を襲ったあの怪物のような存在が、ハルケギニアのどこかで息づいている。そのように本人は感じていたらしく、私に自分の持ちうる剣術を教えられる限り叩き込んでくれたのだと思う。最も、女性に武器を持たせたくないという持論で、最初は乗り気ではなかった。それでも私は、師匠のおかげで己の生き方を決められたのだ」
誇 らしげに語るクリスは、常に笑みを見せていた。師匠である影竜に対して、強い尊敬と憧れを持っていることがひしひしとサイトたちに伝わった。
「錦田影竜…本当にお侍さんを師匠にしてたんだ」
クリスが袴姿とはいえ、詳しく聞くまではどこか半信半疑なところがあったハルナだが、作り話にしては出来上がっているものだと思った。クリスがしっかり、自分たちの知らない日本人名を口にしたことで、彼女の言ったことが改めて真実だと確信した。
「じゃあ、その人は今でもクリスの国にいるのか?」
もしかしたら会えるのではないだろうか。その期待を胸にクリスに尋ねるサイトだが、クリスは首を横に振った。
「残念だが、彼は昨年にどこかへ一人旅に出てしまったんだ」
「旅に出た?なんで…!?」
「彼は元々妖魔退治のための旅をしていたんだ。私の国だけに留まっていては、その間に別の場所で活動する物の怪たちの蛮行を許すことになる。元々期間限定の条件を呑んだ上で師匠を申し出ていたからな。寧ろ去年まで私の国に、一点の場所に留まっていたこと自体、彼にとって珍しいことだったんだ」
「そっか…」
クリスの師が姿を消したと聞いて、サイトは残念そうにする。
侍は数百年も昔の存在でしかない。そんな昔の時代の存在である影竜が、時を越えて現れ
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