侍娘-クリスティナ-part3/クリスの師
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はなる。なぜ異世界人である彼女があんな服を着ているのか。
(…俺たち以外に、まだ地球からやって来た誰かがいて彼女と接触した。または…実は彼女自身が地球人なのか…)
その二つ以外の予測は着かなかった。後者は、確証が前者と比べて足りなすぎるので、可能性としては低すぎるが。どちらにせよ、彼は一種の警戒心を持って耳を傾け始めた。
「まずどこから話すべきか…そうだな」
少し頭の中で、日本やそれに連なることを整理しながら、クリスは話し始めた。
それは、クリスがまだ10にも満たない幼い少女だった時の事だった。
両親であるオクセンシェルナ王が彼らの護衛を引き連れて狩りに出かけた時、クリスも一緒に付き添っていた。父の狩りをする姿に興味を持っていたからだ。父の放つ弓で狩った鹿料理をコックに作らせる予定だった。
しかし、その日は鹿が中々姿を現さなかった。
「…陛下、おかしいです。周囲を探ってみましたが、鹿の姿が一匹も見当たりません」
周囲の森の中へ護衛兵が鹿を捜索するも、成果はなかった。
「鹿がおらんのでは狩りはできぬ。久方の遠乗りでこれとは…我ながら運のないことだ」
王とは多忙の身の上。だからこそ道楽に興じたいという思いもある。だが趣味の狩りができないようでは、ここにいる意味がない。
やむを得ず狩りを中止し、代わりに街へ私物の買い物にしようと思ったとき、もう一人の護衛兵があわてた様子で報告を入れてきた。
「大変です!姫様のお姿が…!」
「何!?」
愛娘であるクリスの不在に王は驚愕する。
そのクリスだが、自分を護衛していた兵が王によってお叱りの言葉を受けていると露知らず、森の中を散策していた。
当時、彼女が師匠と飛ぶ男と出会う前だったこともあり、口調は本来の王女らしい、気品とおしとやかさに満ちたものだった。
「父上のためにも、鹿を探して来よう」
そんな子供らしい親を思う心遣いが、彼女にとって運命的な出会いを果たすきっかけとなるなど思いもしなかっただろう。
鹿を探しに、クリスは一人森の中を探し回っていくが、その最中だった。
突如山肌が大きな地鳴りを起こす。ただでさえこのような事態は人間の足をすくませるが、当時まだ子供だったクリスはさらに驚きで足を止めてしまう。だががけ崩れ以上に彼女を恐怖させることが起こる。
森の中から巨大な影が這い出てきて、クリスの前に姿を現したのである。
「ば、化け物…!」
角と鋭い牙を持つ、巨大な怪物、『牛鬼怪獣ゲロンガ』。
「グルルルル…」
その口にはすでに食われてしまった鹿の血がおびただしいほどに見えた。クリスの恐怖を煽るのに十分すぎた。
彼女は逃げるために、元の方角へ反転し駆け出した。だがどれほど早く逃げても、一向に父たちの元にたどり着けない。実は、彼女は恐怖
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