巻ノ百二十三 山を出てその十
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「何故隠した」
「だって剣術と体術で闘うからね」
「だからか」
「そう、これは忍術だから」
「そのうちの炎の術じゃな」
「こっちはね」
それはというのだ。
「使わないよ」
「そうか、ではな」
「これで闘うよ」
こう話してだ、そしてだった。
妖花は音もなく幸村に向かった、幸村もまた対して。二人はそのまま激しい一騎打ちに入り何十合百合と打ち合った、刃と刃が撃ち合い銀が飛び散り。
かなりの時それが行われていた、だがここでだった。妖花に対して声がきた。
「待て」
「半蔵様!?」
「そうだ、若しやと思い来たが」
この言葉と共にだ、服部が出て来て二人の間に来て言ってきた。
「真田殿が相手ではな」94
「私でもだね」
「互角だ」
勝てないというのだ。
「だからね」
「それでか」
「そうだ、だからだ」
「ここはなんだ」
「仕方がない」
「では」
「一人では無理だ」
幸村に勝つことはというのだ。
「真田殿だけは、だからな」
「ここは退いて」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「大坂に移れ」
「けれど場合によっては」
「確かに戦えと言った」
服部もそれは認めた。
「それはな」
「しかしなの」
「事情が変わった、大坂の戦力が思ったより強くなった」
「だからなの」
「お主達をここで失う訳にはいかぬ」
「けれどここで真田殿を倒せば」
妖花は服部に食い下がる様に言った。
「それで」
「確かに大坂の力は落ちるな」
「真田殿がおられないだけね」
「そして十勇士達もじゃな」
「差し違えるつもりで向かえば」
「そうじゃ、差し違えることなれば」
十二神将達がとだ、服部は妖花に返した、
「そうなれば我等はそれだけ戦力を失う」
「忍の者が」
「大御所様もそう思われてな」
「止められたの」
「拙者もその考えになった」
だからだというのだ。
「だからな」
「それじゃあ」
「そうじゃ、ならん」
絶対にという言葉だった。
「ここで闘うことはな」
「じゃあ真田殿の主従は」
「仕方がない」
服部は妖花に苦い顔で述べた。
「大坂に行って頂く」
「そうなるの」
「真田殿が大坂に入られれば確かに大きな力になる」
大坂にとってだ。
「間違いなくな、しかし真田殿がおられずとも」
「大坂はなの」
「十万の兵に天下の豪傑が多く集まった」
幕府の思っていたよりも遥かにというのだ。
「それでお主達も揃ってなければならぬ」
「大坂に勝つ為に」
「大御所様はそう決められた」
「わかったよ」
妖花も難しい顔であるがそれでも頷いて応えた。
「じゃあね」
「うむ、お主達はすぐにな」
「ここからだね」
「都に向かわれている大御所様の本陣に
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