巻ノ百二十三 山を出てその七
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「私でもね」
「討つことはですか」
「出来ませぬか」
「姫様でも」
「あの方は」
「あの人は本当に強いから」
服部の片腕、もっと言えば分身とさえ言っていい彼女から見てもだ。
「傷を負わせられる位だね」
「ですがその傷で、ですね」
「大坂の戦に出られない様にする」
「それが出来る」
「だからですね」
「それを狙っていくよ」
これが妖花の考えだった。
「それでいいね」
「わかりました」
「それではです」
「ここはです」
「そうしていきましょう」
「是非」
「我々も協力します」
十二神将達もというのだ。
「そしてそのうえで」
「何としてもです」
「真田殿をお止めして」
「大坂に行かせぬ」
「そうしましょう」
「絶対にね、じゃあね」
こう話してだった、妖花は姿を消した、だが。
その気配を察してだ、十勇士達は話した。
「どうやらな」
「うむ、一人な」
「動いたな」
「そうじゃな」
こうひそひそと話した。
「それもかなり強い者が」
「十二神将の中でも」
「動いた」
「これはまさかと思うが」
「十二神将筆頭、妖花か」
幸村もここで言った。
「あの者が動いたか」
「そして他の十二神将達はです」
「我等の周りにいます」
「若し我等が迂闊に動けば」
「その時はです」
「間違いなく」
十勇士達は幸村にさらに囁いた。
「襲い掛かってきます」
「そうした危うい結界を張っております」
「ですからここで動けるのは」
「申し訳ないですが」
「拙者しかおらんか」
幸村は十勇士達に正面を向いたまま言った。
「ここはな」
「はい、そうかと」
「我等は結界にあたります」
「そのうえで他の十二神将達を動かせませぬ」
「奥方様や姫様もお守りします」
「拙者達の妻子も」
「頼む、大助もじゃ」
幸村は我が子に声をかけた。
「結界にあたれ」
「わかりました」
大助は父の言葉に確かな声で応えた、そこには自身の父に対するこれ以上はないまでの信頼があった。
「それでは」
「では拙者はな」
「その動いた者にですか」
「向かう、その間のことは頼む」
「さすれば」
大助は頷きそしてだった、そのうえで。
一人だ、すっと前に出て妻子達に言った。
「少し用を足してくる」
「はい」
妻の竹は夫に微笑んで応えた、実は察しているがそれはあえて隠してにこやかに微笑んで応えたのだ。
「それでは」
「うむ、すぐに戻る」
こう妻にも言ってだ、幸村は前に出てだった。そのまま十勇士達が見えない場所にまで進んだ。すると。
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