275部分:第二十話 誰にも言えないその十
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第二十話 誰にも言えないその十
暗い顔になってだ。こう述べたのだった。
「かかっては危険な病でしょう」
「死に至る病」
「かかっておられるかどうかはまだわかりません」
だが、だ。それでもだというのだ。
「しかしその病を御気にされていることは間違いありません」
「そうなのか」
「御気をつけ下さい」
真剣な顔でだ。兄に忠告をした。
「そして義姉様をです」
「支えるんだね」
「それは兄様にしかできないことです」
「だからこそ」
「はい、そうされて下さい」
「妻がどうなっても」
例えだ。そうなってもだというのだ。
「僕はやることはもう決めているよ」
「左様ですか」
「うん。彼女を愛するようになってから」
「その時からもう」
「決めているから」
微笑んでだ。義正は妹に話した。
「最初からね」
「それは変わらないですね」
「知っているんじゃないかい?」
微笑んでだ。彼は妹にこう返した。
「僕は一度決めたらね」
「決してですね」
「そう。考えは変えないよ」
そうだというのだ。
「絶対にね」
「そうですね。とりわけそれが義やそうしたことになるなら」
「そう、変えない」
それはだ。絶対にだというのだ。
「だからね」
「そうですね。ではお兄様は」
「そうするよ。絶対に妻を愛するよ」
そうするというのである。
「絶対にね」
「わかりました。確かにそうでした」
真理もだ。このことを思い出して頷く。
そのうえでだ。兄に対して微笑みだ。そうして言ったのだった。
「では。お兄様は」
「僕は」
「そのままお進み下さい」
こう兄に告げる。
「お兄様の信じる道を」
「ではこのまま」
「それが信じる道ならば」
そうするべきだと。義美は話す。
「そうして下さい」
「わかったよ」
義正は妹のその言葉に微笑んで頷いた。
そのうえでだ。こうも言うのだった。
「信じる道を歩めばいいね」
「後は導く方を大勢出て来られます」
「これまでがそうだったように」
「道は一つではありません」
義美は微笑みだ。兄にこのことも話した。
「一人の道は一つでも」
「その他の無数も道が重なり合って」
「そうして世界になっている」
義正もわかってきた。このことが。
「そういうことだね」
「はい、そうです」
「では。一人じゃないことも頭の中に入れておいて」
「少なくともお兄様は既に二人です」
「妻と」
「その。義姉さんとです」
一緒だというのだ。そうした話をしてだ。
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