273部分:第二十話 誰にも言えないその八
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第二十話 誰にも言えないその八
実家に戻った時もだ。それは同じだった。
両親に対しても暗い顔でいた。彼等もそれに気付いてだ。
「真理、何があったのだ」
「そんなに暗い顔をして」
「いえ、別に」
言葉ではだ。打ち消す彼女だった。
「何もありません」
「義正君とは何もないのだな」
「特に」
「はい、幸せです」
だがその顔は幸せな中にいる顔ではなかった。
暗く青い顔でだ。その顔での言葉だった。
その顔でだ。真理は言うのである。
「満ち足りています」
「そうは見えないが」
「その顔は」
両親は心から気遣う顔で娘に対して言う。
「本当に何があった」
「大丈夫なの、本当に」
「何でしたら御聞き下さい」
誰に聞くか。それは。
「婆やに」
「そうか。婆やにか」
「聞いてもいいのね」
「はい」
夫婦仲については絶対の自信があった。それは確かに何の問題もない。もっと言えば経済的にもだ。そうしたことに不安も不満もなかった。
だが己の身体のこと、それだった。それについてはだった。
言えずにだ。暗い言葉を出すだけだった。
「ですから」
「そこまで言うのならいいが」
「婆やが一番知っているでしょうし」
「はい、どうしてもというのなら」
どうかとだ。真理も半ば見得の如く話す。
「そうして下さい」
「わかった。大丈夫だな」
「義正さんとのことは」
二人もこのことは確信できた。そのことはだ。
だがそれでもだ。娘の暗く青い顔を見てだ。
どうしても不安を拭えずにだ。こう言ったのだった。
「何かあればな」
「その時はね」
「わし等に何でも言ってくれ」
「そうしてね」
「そうさせてもらいます」
暗い顔のままだ。真理は両親に答えた。
しかしだ。暗い顔はそのままでだ。彼女は実家でもいるのだった。
義正もそんな彼女に気付いていた。それでだ。
兄達にだ。こう相談したのだった。
「妻ですが」
「何かあったのか?」
「一体」
「近頃。どうも暗いのです」
こうだ。兄達に話したのである。
「何かに困り悩んでいる様な感じです」
「あの真理さんがか」
「そうなっているのか」
「はい」
そうだとだ。義正はまた話した。
「どうしてなのかはわかりません」
「何かおかしなことがあったのだろうか」
「それでは?」
兄達はだ。いぶかしみながらまずはこう答えた。
「夫婦仲は問題ないのだな?」
「そして真理さんには」
「トラブルめいたものはなかったとのことです」
義正は不貞やそうしたことはなかったというのだ。
「妻はそうした人間ではありませんし」
「そうだな。真理さんはな」
「非常に真面目な方だ」
「それにあの婆やさんが常に傍にいる」
「それ
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