第四十話 偸盗その七
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「結構美味しいとか」
「そうなのか」
「はい、拙僧は食したことはないですが」
「そもそも僧侶だしな」
「僧侶でもこの世界では食べていますね」
「そうだったな」
「現代の日本もそうですし」
この辺り教義の解釈が変わったのだ、かつては肉食妻帯を禁じていたのが仏門だが釈迦の頃はなかった。それに供えものならば何でも頂くという考えから肉も魚も食べる様になったのだ。また妻帯も明治維新以降様々な議論と葛藤と社会変革の末に認められる様になった。浄土真宗は最初から妻帯を認めていたがだ。
「拙僧もです」
「肉も食っていたな」
「最初からそうでしたね」
「それも美味くな」
「魚介類が好物でして」
謙二は英雄に彼の好みのことも話した。
「それも新鮮で生の」
「刺身がか」
「海のものも川のものも」
「鯉もか」
「大好物です」
実際にという返事だった。
「鯉のお造りは最高ですね」
「確かに美味いな、鯉の刺身は」
「ですから若し果実や茸がなければ」
「その時はか」
「釣りをしてもいいかと」
そうして川魚を獲ってというのだ。
「そうして鯉ならです」
「刺身か」
「出来ればいいですね、川魚は危険ですが」
「出来るだけ生で食するものではござらぬよ」
川魚はとだ、智はあけびを食いつつ言った。
「例え美味でも」
「虫ですね」
「左様、虫がいるでござるから」
寄生虫である、この場合の虫とは。
「だからでござる」
「ではその場合はです」
「煮るなり焼いたりしてでござるな」
「いえいえ、氷の術でまず徹底的に凍らし」
釣ったその鯉なり川魚なりをだ。
「そうして氷が溶けるまで待てば」
「凍って中の虫がでござるか」
「死滅します」
「そうか、それは」
「はい、こちらの世界の冷凍技術です」
まさにそれだというのだ。
「ですから」
「それを使えばでござるな」
「お刺身を食べられます」
「それがあったでござるな」
「勿論徹底的に凍らせる必要があります」
虫達が死滅するまでにだ。
「そうしなければなりませんが」
「それでもでござるな」
「この術を使えばいいのです」
「その発想はなかったでござる、氷の術なら」
「侍であるからですね」
「拙者も使えるでござる」
侍は陰陽師の術も使える、それでなのだ。
「ですから」
「それでは」
「鯉を釣った時はお任せあれ」
それで鯉の刺身を食べたいならというのだ。
「拙者に」
「それでは」
「いい話を聞いた、術を使えば確かにな」
英雄もここで言った、謙二の話を聞いて。
「食いものも保存が出来る」
「左様でござるな」
「それは個人だけでなく国単位でも使いたいな」
「食べものを保存する技術として」
「食いものが保存出来ればそれ
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