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儚き想い、されど永遠の想い
267部分:第二十話 誰にも言えないその二

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第二十話 誰にも言えないその二

「我々は見守ることしかです」
「左様ですか」
「そうです。ではこれで宜しいでしょうか」
「はい」
 労咳の話をここで終えてだった。
 医者は今度はだ。真理に尋ねた。
「ここに来られた理由は」
「はい、婆やと共にです」
 今婆やは席を外している。二人で来たが今は別室で茶を飲んでいるのだ。
 その彼女のことを話に出してだった。真理は医者にあらためて話した。
「お菓子も持ってきました」
「そうですか。お菓子も」
「はい、葛饅頭を」
「おお、それはいい」
 医者は葛饅頭と聞いてそれまで強張っていたその顔を微笑まさせる。どうやらだ。彼は甘党らしい。それが窺える反応だった。
「では早速です」
「召し上がられますね」
「そうさせて下さい。それでは」
 こうしてだった。最後は甘いものの話で終わった。しかしだ。
 真理は労咳の話を聞いてだ。さらにだった。
 顔を暗くさせて屋敷に帰りだ。そこで、だった。
 屋敷の中でだ。こう婆やに漏らした。
「人は」
「人は?」
「一歩先もわからないものなのですね」
 何処か虚ろな目になってだ。こう言ったのだ。
「本当に」
「人はですか」
「はい、人はです」
 こう話すのだった。
「それまで幸せだったとしても」
「どうされたのですか?」
 婆やは真理のその表情と話を見て聞いてだ。
 異様なものを感じてだ。彼女に問うたのだった。
「一体」
「いえ」
 しかしだとだ。真理はだ。
 自分の言葉を打ち消してだ。そのうえで婆やに話した。
「何でもありません。それでは」
「それではですか」
「帰りましょう」
 真実を言わないままだ。婆やにこう告げた。
「お屋敷に」
「わかりました。ですが」
「ですが?」
「その前にです」
 婆やは真理が暗い気持ちでいるのはわかった。それでだった。
 彼女の気持ちを落ち着かせる為にだ。こう提案したのだった。
「今はです」
「今は?」
「珈琲でもどうでしょうか」
 それを飲みにだ。彼女に勧めたのである。
「そうしましょうか」
「いえ、いいです」
 いいとだ。真理はその申し出を断ったのだった。
「今は」
「そうですか。珈琲は」
「はい、いいです」
 また言う真理だった。
「ですから。もうすぐに」
「家に帰りましょう」
 こうしてだった。真理はだ。
 医者のいる病院から逃げる様にだ。屋敷に戻ったのだった。
 そしてだ。戻るとだった。
 自分の部屋に篭もってしまった。そんな彼女を見てだ。

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