巻ノ百二十三 山を出てその四
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「拙者も他の者達もな」
「そのお言葉聞いて安心しました」
「そうか」
「これが間違いなく今生の別れとなりますが」
「それでもじゃ、拙者達はな」
「大坂ではですな」
「散らぬ」
また言ったのだった。
「そのつもりじゃ」
「勝たれますか」
「そのつもりで戦う」
こう言う、だが大坂に入って勝てるとは思っていなかった。幸村にはもうそうしたことも見えていたのだ。
しかしだ、それでも言うのだった。
「命は一つ、この世で死ねば生まれ変わりな」
「また別の生となりますな」
「この生で出来ることは終わりじゃ」
そうなってしまうというのだ。
「だからな」
「何としても生きられますか」
「この生ですべきことは何としてもする」
まさにその為にというのだ。
「拙者は。だから迂闊に死なずに」
「大坂での戦も」
「何があっても生き延びる、安心せよ」
「わかり申した」
長老も応えた、そしてだった。
村人達は幸村主従を意気揚々と宴まで開きそうして九度山から送った、朝に村から出る時には総出で見送った。
そこでだ、長老はまた幸村に言った。
「では」
「うむ、これでな」
「ご武運を」
「必ずやすべきことを果たす」
「そうしてからですな」
「天命まで生きる」
そうするというのだ。
「拙者達はな」
「そのお言葉確かに受け賜わりました」
「ではな」
「はい、大坂まで」
無事にとだ、長老は村人達を代表して言ってだ。幸村主従と手を振り合って別れた。こうしてだった。
幸村は九度山を出た、すると周りにだ。
すぐに伊賀者達の気配を感じたがだ、彼は平然としてこう言った。
「気にすることはない」
「はい、一切ですな」
「気にすることなくですな」
「このままですな」
「大坂に向かいますか」
「そうせよ、何かあってもな」
若し伊賀者達が前に出てもというのだ。
「その時もな」
「戦をしても」
「それでもですな」
「大坂に向かう」
「そうしますな」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「そうしていくぞ」
「わかり申した」
「それではです」
「このまま行きましょうぞ」
「伊賀者達は気にせず」
「我等は大坂に」
「来る者だけ相手をする」
幸村は十勇士そして大助にまた言った。
「我等はこのまま大坂に向かうぞ」
「どうやら見ているのは十二神将ですが」
「伊賀者達の中でも腕利きの」
「それでもですな」
「我等は」
「そうじゃ、気にすることはない」
例え彼等が見張っていてもというのだ。
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