苦悩の果てに来たる
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海棲艦がゲリラ戦を選択したことで、彼らが集めた情報は間違いであったとされた。事前情報が間違っていたから、予測が外れたと結論したのだ。
だが違う。誰も深海棲艦がゲリラ戦を行うなど、考えてもいなかった。今まで、深海棲艦はそんなことをしなかったからだ。偵察情報ではなく、蓄積情報が間違いだったのだ。だとするならば、これからの戦争に与える影響がどれ程になるか。案外、それを嫌ったのかもしれない。
しかし、現実は人間の事情を忖度しない。どこかに準備を整えた、無傷の軍があるはずだ。獣としてではなく、あの沖縄を平らにした、絶大な力の持ち主としての深海棲艦の群れが。
当初は、アリューシャン以外だと、新城は考えていた。戦力がないからこそ、ゲリラ戦を展開したのだと。
だが、資料をひっくり返し、考えを深めるほど不安が募る。どうしても理解出来ないのだ。ゲリラ戦までして、アリューシャンで防衛する意味が。物量が自慢の深海棲艦が、どうして脆弱なパルチザンの真似事などするのか。
この不安を形にして、上層部に訴える材料が見つからない。ただでさえ複雑な国内事情で、軍を動かし得る手段がないのだ。
だから、新城は方針を転換した。自分が動かせる範囲で、備えようとした。しかし、遅々として進まない。未だに艦娘は暇潰しの相手に過ぎず、受け入れられていないことは明らかだ。西田ですら、そうなのだ。でなければ、躊躇うまい。彼の影響力や権限では、それが精一杯だった。
だから、大隊長に動いて欲しかった。他に期待をかけるべき何者も、新城には見つけられなかった。それがどんな人物だろうとだ。
不安が心を侵していく。いっそ、しがらみなど吹き飛ばしてしまいたい。だが、それでは霞の気づかいを無にしてしまう。
誰もなくなった部屋、夜の帳の降りた机の上で、新城は一人吐き気をこらえて考え続けた。
だから、その報せが届いたとき、新城は救われたように笑顔だった。
視界の端では、何か小さな者たちが踊っている。
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